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アマミノクロウサギの遺伝的多様性、マングースのために減少するも回復に期待

2017年9月11日掲載

論文名

The influence of invasive mongoose on the genetic structure of the endangered Amami rabbit populations. (希少種アマミノクロウサギ個体群の遺伝構造に与える移入種マングースの影響)

著者(所属)

大西 尚樹(東北支所)、小林 聡(電力中央研究所)、永田 純子・山田 文雄(野生動物研究領域)

掲載誌

Ecological Research(日本生態学会英文誌)、32(5)、735-741、2017年9月発行、電子版、2017年8月1日公開
DOI:10.1007/s11284-017-1489-5(外部サイトへリンク)

内容紹介

特別天然記念物として知られているアマミノクロウサギは、当初は奄美大島全島域に生息していました。しかし、1979年にハブの駆除のために放逐されたマングースに捕食されたため、マングースの分布拡大に伴い個体数が減少して、北部の小さな個体群と南部の比較的大きな個体群の2つに分断されました。

本研究では、この分断化されたアマミノクロウサギの遺伝構造を、島内各地で採取した糞からDNAを抽出して調べました。その結果、アマミノクロウサギの遺伝構造は距離が離れるほど大きく異なり、分断される以前に北部と南部の個体群では、すでに異なる遺伝的な特徴を持っていたことがわかりました。つまり、マングースが多く生息していた島の中央部では、アマミノクロウサギが局所的に絶滅してしまったため、この地域の個体群がかつて保持していた遺伝的な構造が「抜け落ちて」しまったと考えられます。一方、遺伝的な多様性に着目すると、北部の孤立した個体群では多様性が低くなっていました。これはマングースによって分断された2つの個体群のうち、北部の個体群はその個体数が南部の個体群に比べ大きく減少したことが原因と考えられます。

環境省は2000年よりマングースの駆除を開始し、近年ではマングースの個体数が減少しています。これに伴いアマミノクロウサギの分布域および個体数は回復傾向にあり、絶滅していた島の中央部でも目撃されるようになりました。このことは、北部の小さな個体群にかろうじて残されていた遺伝的な特徴が完全に失われてしまう、という危機的な状況を回避できる見込みが強いことを示しています。環境省は2022年までにマングースの完全排除を目指しています。これが実現できれば、アマミノクロウサギの南部と北部の個体群間の交流が再開し、北部の孤立した個体群の遺伝的な多様性も回復することが期待できます。


図1:アマミノクロウサギの分布域の変化と、遺伝的な構造のイメージ

アマミノクロウサギの分布域の変化と、遺伝的な構造のイメージ

1970年代までは奄美大島全域の色のついた地域に生息していて、遺伝的な構造は連続的に変化していました。図中の色は連続的に変化する遺伝構造のイメージを表しています。この時点で島の北部と南部は連続的に分布しているものの、遺伝構造が異なっている(イメージでは色が違う)ことがわかります。1980年代以降にマングースが分布域を広げると、島の中央部で局所的な絶滅がおこり、その地域の遺伝的な構造(イメージではオレンジ色の部分)が抜け落ちてしまいました。

 

写真1:アマミノクロウサギ

写真1:アマミノクロウサギ

 

写真2:アマミノクロウサギの糞

写真2:アマミノクロウサギの糞

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