研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2018年紹介分 > 北国のカミキリムシによってマツ枯れ被害が広がる可能性に注意
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2018年1月15日掲載
論文名 |
Effect of Monochamus grandis (Coleoptera: Cerambycidae) on phoretic stage formation of Bursaphelenchus xylophilus (Nematoda: Aphelenchoididae) and the transfer of nematodes to the beetle(マツノザイセンチュウの便乗ステージ形成に及ぼすヒゲナガカミキリの影響とマツノザイセンチュウのヒゲナガカミキリへの乗り移り) |
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著者(所属) | 前原 紀敏(東北支所)、神崎 菜摘(関西支所)、相川 拓也・中村 克典(東北支所) |
掲載誌 |
Nematology, 20(1): 43-48, BRILL, November 2017, DOI:10.1163/15685411-00003123(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
マツノザイセンチュウ(以下、線虫と略す)は、日本を初めとする東アジア等のマツ林に甚大な枯死被害をもたらしているマツ材線虫病(マツ枯れ)の病原体です。日本では、線虫はマツノマダラカミキリ(以下、マダラと略す)によって健全なマツ類に運ばれ、その木を枯らしてしまいます。マダラに近縁で北国や高標高地域に生息しているヒゲナガカミキリ(以下、ヒゲナガと略す)は、餌および産卵場所として主にモミ類を利用しています。実は、ヒゲナガは時にはマツ類を利用することもあるのですが、線虫を運ぶかどうかについては、ほとんど分かっていませんでした。 線虫は、餌を食べなくても耐えられる分散型第4期幼虫という状態になってマダラに運ばれます。この分散型第4期幼虫は、マダラが近くにいる場合に出現することが知られています。今回、室内実験条件下でヒゲナガと線虫を共存させたところ、マダラの場合と同程度に分散型第4期幼虫が出現し、ヒゲナガに運ばれることが分かりました。このことは、もしヒゲナガが線虫と同じ木を利用すれば、その運び屋になりうることを意味しています。 ヒゲナガはマツ類よりモミ類を好むため、通常は線虫と出会う機会がなく、マダラのような運び屋にはなりえません。ただし、ヒゲナガの生息地周辺でマツ枯れによって大量のマツ類が枯死した結果、このマツ類を産卵場所としてヒゲナガが利用する場合には、線虫の運び屋として加担する可能性があり、注意が必要です。 写真:ヒゲナガカミキリ(左)とマツノマダラカミキリ(右)を寒天培地上でマツノザイセンチュウと共存させている様子。 |
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