研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2018年紹介分 > アマゾン中央部における森林択伐後のバイオマスの回復過程を解明した
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2018年5月7日掲載
論文名 |
Recovery of above-ground tree biomass after moderate selective logging in a central Amazonian forest |
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著者(所属) |
大谷 達也(四国支所)、アドリアーノ リマ(国立アマゾン研究所)、諏訪 錬平(国際農林水産業研究センター)、マルシオ アマラル(国立アマゾン研究所)、大橋 伸太(木材加工・特性研究領域)、アルベルト ピント(アマゾン州立大学)、ジョアキン サントス(国立アマゾン研究所)、梶本 卓也(東北支所)、ニーロ ヒグチ(国立アマゾン研究所)、石塚 森吉(元森林総合研究所) |
掲載誌 |
iForest, 11: 352-359, April 2018, DOI:10.3832/ifor2534-011(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
日本にもマサランドゥーバやイペなどのアマゾン産の木材が輸入されていますが、これらの木材は天然林から抜き伐り(択伐)することによって生産されています。一方で、地球の肺ともいわれる熱帯林が択伐によって劣化し、炭素蓄積量が減少して地球規模での気候変動が進むことが危惧されています。熱帯林の木材利用と気候変動の抑制とのバランスを見極めるためには、択伐を受けた森林がどのように回復するのか正確に知る必要があります。 そこで、これまでに調査事例の少なかったアマゾン中央部において、実際に木材会社によって択伐された森林に生育する樹木のバイオマス*の変化を調べました。択伐された年の異なる複数の地点に調査プロットを設置し、2006年、2010年、2012~13年と3回にわたって繰り返し樹木の本数と直径を記録しました。伐採後の経過年数とバイオマスとの関係、および隣接する保護林との比較から、伐採後14年でバイオマスはもとに戻ると推定しました。しかし、樹木の大きさごとにバイオマスの変化をみると択伐林と保護林ではいまだ異なっており、バイオマスの内訳はもとに戻っていないと考えられました。 この結果から、注意深く穏やかな択伐をおこなった場合、残された樹木が成長することによってバイオマスの総量は比較的に短期間で回復できるが、森林の構造までもとに戻るにはそれよりも長期間が必要であることがわかりました。 *バイオマス:面積あたりの生物の量。ここでは1ヘクタールあたりの樹木の乾燥重量のこと。そのおよそ半分が炭素の量になります。
写真:アマゾン中央部の森林に残された切株と伐採により明るくなった林床 この伐採会社ではヘクタールあたり平均2本という非常に穏やかな択伐をしているため、択伐によって失われた樹木のバイオマスは、残された樹木が成長することによって14年間という短期間で回復が期待できます。 |
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