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高精度土石流シミュレーションを短時間で実現可能に

2018年7月31日掲載

論文名

粒子法と格子法を結合した土石流シミュレーション

著者(所属)

鈴木 拓郎(森林防災研究領域)、堀田 紀文(東京大学)

掲載誌

砂防学会誌、Vol.71、No.2、p.13-21、砂防学会、2018年7月

内容紹介

土石流による被害を防止・軽減するためには、治山施設による対策が有効です。効率的な施設対策には、土石流の動きを再現して施設の設計や配置を考える技術が重要になり、そのための有用な手段として、土石流の数値シミュレーション手法の高度化に関する研究を進めています。

従来のシミュレーション手法は格子法と呼ばれ、土石流が流れる空間を計算格子(メッシュ)に分割して計算する方法であり、治山施設周辺における計算精度は十分ではありませんでした。そこで、流体や地形・施設を粒子の集合体として計算する粒子法と呼ばれる方法を用いた土石流の数値シミュレーション手法を以前に開発しました。この方法により治山施設における複雑な土石流の挙動を高精度に計算することが可能になりましたが、従来の格子法に比べて膨大な計算時間が必要であり、土石流の発生源から治山堰堤に捕捉されるまでの一連の過程を計算する事は現実的ではありませんでした。そこで、粒子法と格子法のそれぞれの利点を生かし、治山施設周辺などの高精度計算が必要な区間のみを粒子法で計算し、その他の区間は計算時間の速い格子法で計算するハイブリッド法を新たに開発しました。そして、本手法が必要な部分の計算精度を保ちつつ、計算時間を大幅に短縮可能であることを実証しました。例えば、一定勾配の条件で粒子法の計算区間を1/5に限定すれば、計算時間も概ね1/5になり、結果としてより多くの箇所や多様なケースの計算が可能になるため、治山施設の効率的な形状・配置を検討するための重要な技術となります。

 

図:ハイブリッド法による土石流シミュレーション

図:ハイブリッド法による土石流シミュレーション
図中のカラースケールは土砂濃度(水と土砂の混合物に占める土砂の比)を表しています。格子法区間の赤いプロットは河床位、黄緑のプロットは水位を示しており、粒子法区間は土石流粒子を示しています。格子法・粒子法区間の接続部で、水位が連続的に接続していることがわかります。

 

図:この図は一定勾配の条件で、粒子法の計算区間を1/5に限定した場合

図:この図は一定勾配の条件で、粒子法の計算区間を1/5に限定した場合(ハイブリッド法)と全区間を粒子法で計算した場合の計算時間を比較したものです。ハイブリッド法の計算時間は粒子法のみの計算時間の約1/5になっています。

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