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昆虫の体内のミクロな菌類の多様性

2018年8月24日掲載

論文名

Three new species of Harpellales from Mount Tsukuba (筑波山で採集されたハルペラ目の3新種)

著者(所属)

佐藤 大樹(森林昆虫研究領域)、出川 洋介(筑波大学)

掲載誌

Mycologia、Taylor and Francis、June 2018、https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/00275514.2018.1450577(外部サイトへリンク)

内容紹介

昆虫の多様性調査では、その場所に特徴的な種がいる一方、多くの場所に共通する種がいることもあります。共通種が多い場所の間での多様性の違いを考える視点として、昆虫に寄生する生物に着目しました。寄生生物は昆虫よりも小型なので、環境の微細な影響を受けると考えられます。昆虫の腸には特別な糸状菌(カビ)が寄生していることが知られています。今回の研究では、筑波山の沢に棲む水生昆虫類を対象に、それらの腸に寄生する菌類が存在するか探索を行いました。水中の岩の表面にいる昆虫を擦り落として下流に構えた網で採集し、得られた昆虫を解剖して腸の中を観察しました。その結果、調査した3種類の昆虫種からそれぞれ異なる菌類が得られました。そして、それらがみなハルペラ目に属する新種であることも判りました。そこで、Stachylina philoricolaをヒメアミカ属(ハエ目)の一種から、Zygopolaropsis sphaericaをシロハラコカゲロウ(カゲロウ目)から、Lancisporomyces tsukubaensisをフサオナシカワゲラ属(カワゲラ目)の一種から、それぞれ新種として記載しました。また、シロハラコカゲロウから得られた菌類については新属の提唱も行いました。寄生菌という目に見えない多様性の指標が虫の中に隠れています。

 

図1 本研究で得られた新種の糸状菌(接合菌の仲間)3種の顕微鏡写真

図1 本研究で得られた新種の糸状菌(接合菌の仲間)3種の顕微鏡写真 スケールバーは写真3枚とも10μm。
A: Stachylina philoricola. 属名のStachylinaは植物のチョロギ(学名Stachys)のような形の菌糸に由来し、種小名のphiloricolaは宿主昆虫の名前(Philorus)に棲む(cola)という意味です。写真は翅のように沢山の胞子を作った菌体の全形を示しています。
B: Lancisporomyces tsukubaensis. 属名のLancisporomycesは槍のような(Lance)胞子(spore)を持つカビ(myces)、種小名のtsukubaensisはつくばを産地とする(ensis)という意味です。写真は槍形の胞子(接合胞子)です。

C: Zygopolaropsis sphaerica. 属名のZygopolaropsisZygopolarisというカビに似ている(opsis)、種小名のsphaericaは腸に付着している部分が丸い(sphaerical)ことに由来します。写真はひし形の接合胞子です。Zygopolarisの接合胞子は3角形です。

 

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