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アンデス山地における森林劣化の評価には、樹木の組成と樹高の把握がカギ

2018年9月26日掲載

論文名

Variation in tree community composition and carbon stock under natural and human disturbances in Andean forests, Peru (ペルー・アンデスの森林における自然撹乱・人為撹乱影響下の樹木群集組成および炭素蓄積の変異)

著者(所属)

宮本 和樹・佐藤 保(森林植生研究領域)、Edgar Alexs Arana Olivos・Gabriel Clostre Orellana・Christian Marcel Rohner Stornaiuolo(ペルー農業省森林野生動物庁(SERFOR))

掲載誌

Forests 9(7): 390, July 2018, DOI:10.3390/f9070390(外部サイトへリンク)

内容紹介

南米アンデス山地の森林は、近年、農地への転換のための森林伐採が進行しています。それに加えて、用材や薪炭材として樹木が抜き伐りされており、森林は残っていても大きな木が失われたり、樹木の種数が減ったりしています(これを森林劣化と呼びます)。これにより、炭素固定や生物多様性の維持といった森林の機能が低下することが懸念されています。現在、森林がどのような種類の樹木によって構成されているか(これを群集組成と呼びます)を把握することで、森林の状態を評価しようとする試みが進められています。しかし、アンデス山地では、異なる標高に多様な植生がみられ、人と自然との関わりも様々なため、森林劣化がどのように生じているのか、その実態については十分な知見が得られていません。

そこで本研究では、ペルー・クスコ地方の標高600mの上部熱帯林から標高3500mのアンデス山地林に至る様々な標高において森林の調査を行い、標高帯による群集組成の違いを調べました。また、森林内やその周辺で各種の自然撹乱・人為撹乱(注)の痕跡が見られた場合には、それらもあわせて記録しました。その結果、標高2400mから3500mの森林の群集組成には、農業用の小屋や歩道の存在などから示される人為撹乱による影響がある森林では、攪乱の影響のない森林と異なる群集組成となっていました。また、森林の平均樹高が、群集組成の違いを反映していることが明らかになりました。同じ標高帯での森林の平均樹高は、森林劣化が進行するとともに低くなると考えられます。多様な標高域での調査を通じて得られた本研究の成果は、アンデス山地の森林保全を考える上で対策が必要な森林劣化を広域に評価するために役立ちます。

(注)ここでは、風倒害や地滑り、土壌侵食など自然発生的に森林に変化を及ぼすものを自然撹乱と呼び、伐採などの人間活動により森林に変化を及ぼすものを人為撹乱と呼んでいます。


写真:アンデス山地での人間活動の事例

写真:アンデス山地での人間活動の事例(ペルー・クスコ地方)。急峻な斜面にみられる森林が農地への転換を目的にパッチ状に伐採されている(矢印の部分)。

 

図:森林の群集組成を表す指標と平均樹高との関係

図:森林の群集組成を表す指標(NMDS1軸のスコア)と平均樹高との関係。上部熱帯林、アンデス山地林ともに平均樹高に沿って群集組成が変化している。

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