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野生ゼンマイやフキの放射性セシウム濃度の特徴が明らかに

2018年10月10日掲載

論文名

〔1〕2011年の福島第一原子力発電所事故で放出された放射性セシウムの野生ゼンマイ(Osmunda japonica)の葉への移行

〔2〕2011年の福島第一原子力発電所事故で放出された放射性セシウムの野生フキ(Petasites japonicus)の葉柄への移行

著者(所属)

〔1〕清野 嘉之(植物生態研究領域)、小松 雅史(きのこ・森林微生物研究領域)、赤間 亮夫(震災復興・放射性物質研究拠点)、松浦 俊也(森林管理研究領域)、広井 勝(郡山女子大)、岩谷 宗彦(日本特用林産振興会)、二元 隆(元日本特用林産振興会)

〔2〕清野 嘉之(植物生態研究領域)、赤間 亮夫(震災復興・放射性物質研究拠点)、岩谷 宗彦(日本特用林産振興会)、由田 幸雄(元日本特用林産振興会)

掲載誌

〔1〕森林総合研究所研究報告、17巻3(No.447)号、217-232 森林総合研究所、2018年9月

〔2〕森林総合研究所研究報告、17巻3(No.447)号、249-257 森林総合研究所、2018年9月

内容紹介

2011年福島第一原発事故は地域の森林に放射性セシウムの汚染をもたらし、現在でも出荷が制限されている野生山菜が10数種あります。地域資源である山菜の利用に向けて、福島県の100ヶ所を超える地点から野生のゼンマイとフキを集め、植物体内の放射性セシウム濃度の高低にどのような要因が影響しているかを調べました。その結果、ゼンマイでは81%、フキでは23%の検体が放射性セシウムの出荷制限の基準値(生1kg当たりのセシウム134とセシウム137濃度の合計値が100ベクレル)以上と推定され、調査地とした市町村では依然として出荷制限が必要な状況にあることが確かめられました。ゼンマイ、フキ共に、地表に堆積している落葉のセシウム濃度が、フキではこれに加えて土壌中の濃度が植物体内の濃度に影響していること、濃度は春から夏にかけて数倍上昇する例があることが明らかになりました。夏は有機物の分解が進みやすく、根が吸収できる放射性セシウム量が増えます。樹木に比べてサイズが小さく新陳代謝が速い草本の山菜では、短期的な環境中の濃度上昇の影響を受け易いことが予想されました。また、植物体内の濃度は、落葉や土壌中のセシウム濃度の高低以外の要因によって大きく変動していました。栽培植物とは異なり、野生植物では芽の出る時期などの生育ステージが揃わないことが、このような変動を生む一因になっていると考えられました。

今回の結果は、夏に採取し利用する山菜は、季節的な濃度の上昇に注意を払う必要があることを示しています。引き続き、セシウム濃度がどのような要因で変化するかを調べていく予定です。


写真:ゼンマイの芽吹き

写真:ゼンマイの芽吹き

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