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土壌から樹木へのセシウム吸収が菌根菌の影響を受ける

2018年12月17日掲載

論文名

Influence of ectomycorrhizal colonisation on caesium uptake by Pinus densiflora seedlings. (アカマツのセシウム吸収に菌根菌の感染が及ぼす影響)

著者(所属)

小河 澄香(きのこ・森林微生物研究領域)、山中 高史(研究ディレクター)、赤間 慶子(きのこ・森林微生物研究領域)、長倉 淳子(立地環境研究領域)、山路 恵子(筑波大学)

掲載誌

Mycobiology、Taylar & Fransis・韓国菌学会、December 2018、DOI:10.1080/12298093.2018.1538074(外部サイトへリンク)

内容紹介

2011年3月の東京電力福島第一原発事故から7年が経過し、森林に拡散した放射性物資の多くは表層土壌に分布しています。将来の放射性物質の分布様式を予測するには、半減期の長い放射性セシウム(137Cs)について、根を介した土壌から樹木への吸収様式の解明が重要です。多くの樹木の根には菌根菌という菌類が感染し、土壌中から効率的にミネラル類を吸収して樹木に供給しています。そのため菌根菌は放射性セシウムの樹木への吸収に影響を及ぼすと考えられます。そこで、アカマツ実生苗に菌根菌の一種であるツチグリを接種し、アカマツの部位別のセシウム含量を測定しました。

その結果、ツチグリ菌の感染(写真1)により実生地上部のセシウム含量が有意に増加していました(図1)。地下部については、菌接種による有意な変化は認められませんでした。セシウム吸収は、菌根菌や樹木の種の他、土壌中の養分条件の影響も受けると考えられます。そこで、今回、アカマツ菌根苗の育苗に異なる組成の培地を用いましたが、それらの違いは特に認められませんでした。また、カリウムは、一価の陽イオンであるセシウムと、その挙動が類似することが報告されています。本研究でも、ツチグリ菌の感染によって樹木のカリウム吸収量も増加していました。今後は、様々な種の菌根菌や樹木を用いて、菌根菌が樹木のセシウム吸収に果たす役割を明らかにしていきます。


図1:アカマツ実生苗のセシウム含量

図1:アカマツ実生苗のセシウム含量

各種培地上でのアカマツ実生苗のセシウム含量に及ぼす菌根菌接種の影響。菌根菌の接種により実生苗の地上部のセシウム含量は有意に上昇した。

 

写真1:ツチグリ菌根

写真1:ツチグリ菌根。樹木の細根部の表面を黄土色の菌糸が被い、菌根を形成する。また黒色の菌糸束を伸長させ土壌中の養分や水分を効率的に吸収する。

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