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石膏ボードで被覆しないオール木材の2時間耐火CLTを開発

2019年2月1日掲載

論文名

難燃処理木材で被覆した直交集成板(CLT)の2時間耐火性能

著者(所属)

原田 寿郎(研究ディレクター)・上川 大輔(木材改質研究領域)・宮武 敦・新藤 健太(複合材料研究領域)・服部 順昭・安藤 恵介(東京農工大学)・宮林 正幸(ティー・イー・コンサルティング)

掲載誌

木材学会誌、65巻1号 46-53、日本木材学会、2019年1月、DOI: 10.2488/jwrs.65.46(外部サイトへリンク)

内容紹介

厚さ30mm程度のひき板を繊維方向が直交するように積層接着して厚い板状の材料にした直交集成板(CLT)は、新たな建築材料として注目されており、ヨーロッパや北米では、中高層の建築物に構造材料として使用されています。

わが国でCLTを中高層建築物に使用するためには、火災安全性の確保のため、建築基準法で求められる耐火性能の付与が不可欠です。2時間耐火構造の性能を付与すれば、壁や床としてなら超高層の建物にも使用できます。石膏ボード等の無機材料で被覆したCLTの材料は私たちのグループも開発に加わり、最近、2時間耐火構造の国土交通大臣認定取得のプレスリリースを行いました。しかし、木材「だけ」で構成された2時間耐火構造のCLTは開発されていません。

これまでに、難燃薬剤を注入した木材で被覆することで木材だけで構成された1時間耐火構造の集成材の柱や梁を開発してきた技術を活かし、本研究では、厚さ90mmの難燃処理したスギ材の上に薬剤噴出防止と意匠性向上のため厚さ10mmの無処理スギ材を張った木質パネルをCLTにネジ留めで被覆することで2時間耐火構造の性能を付与できる仕様を開発し、床下面からの2時間耐火試験でその性能を確認しました。柱や梁と違って床や壁を難燃処理した木質パネルで被覆する場合、必ず継ぎ目(目地)が生じ、そこが弱点になりますが、パネルの目地の仕様を難燃処理した雇い実(やといざね)または片側スプライン(スプラインの周りには耐火発泡シートを貼付)とすることでこの問題を解決しました(図1)。

これにより、大臣認定を取得すれば、石膏ボードで被覆しない、木材現わしの2時間耐火CLT構造が実現可能です。

(本研究は2019年1月に木材学会誌に公表されました。)

 

図1:2時間耐火CLTの仕様

 

図1:2時間耐火CLTの仕様(図中の数字の単位はmm)

 

図2:2時間耐火試験終了後の試験体の状況(左) 図2:2時間耐火試験終了後の試験体の状況(右)

図2:2時間耐火試験終了後の試験体の状況
左:被覆材をはがした時、CLT表面は炭化していません
右:難燃処理した被覆材パネル(総厚さ100mm)は約30mmの厚さが未炭化の状態です
注:2時間耐火試験では火災を想定した加熱を2時間行った後も消火は行わず、試験体が完全に消炎するまで耐火試験炉にセットしたまま放置します。

お問い合わせ先
【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 原田 寿郎
【研究担当者】
森林総合研究所 研究ディレクター 原田 寿郎
【広報担当者】
森林総合研究所 広報普及科広報係
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