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ドングリを食べるなら気温は低いほうがいい

2019年11月7日掲載

論文名

Cold temperature improves tannin tolerance in a granivorous rodent(寒いとアカネズミのタンニンに対する耐性は向上する)

著者(所属)

Hannah R. Windley(元JSPS特別研究員、野生動物研究領域)、島田卓哉(野生動物研究領域)

掲載誌

Journal of Animal Ecology、2019;00:1–11、British Ecological Society、October 2019 DOI:10.1111/1365-2656.13119(外部サイトへリンク)

内容紹介

地球規模での温暖化が進行する今、野生動物の餌の利用効率や採餌行動が気温によってどう変化するのかを解明することは、生物多様性保全や野生動物管理の点から重要な課題です。

今回、私たちは、日本の森林に広く分布するアカネズミを用いて、植物に含まれる被食防御物質(*)であるタンニン(**)を解毒する能力は、低温下で向上することを明らかにしました。

タンニンを含むさまざまな化学物質は、体内に取り込まれると主に肝臓で解毒されます。肝臓におけるアルコール解毒能力は高温下で低下することが知られていますが、自然界においてもっとも一般的な毒であるタンニンの解毒と気温との関係は明らかになっていませんでした。

そこで私たちは、タンニンを高濃度に含むコナラのドングリを気温10˚Cと20˚Cの飼育下でアカネズミに与え、肝臓の解毒能力や摂食量、消化率などを比較しました。その結果、10˚Cで飼育したアカネズミの方がタンニンを早く解毒でき、多くのドングリを食べられること、そしてドングリに含まれるタンパク質の消化率も高いことがわかりました。

つまり、アカネズミは、気温が低いほどタンニンの毒性をより上手に克服し、ドングリを効率よく食べることができるのです。秋に貯蔵したドングリを食べて寒い冬を乗りきるアカネズミにとって、このような性質は冬を乗り切るのに有利に働くことでしょう。また、この発見は、温暖化による野生動物の生息地や個体数の変化を予測する上でも重要な情報となります。

用語の解説

(*) 被食防御物質:植物に含まれているさまざまな化学物質のうち、動物にとって潜在的に有害であり、そのため動物による食害を妨げる効果を持つ物質のこと。代表的なものとして、タンニンやテルペン、アルカロイドなどが挙げられます。

(**) タンニン:タンパク質と高い結合力を持つ水溶性ポリフェノールの総称です。動物が多量に摂取すると、消化率の低下や腎肝不全をもたらします。

(本研究はJournal of Animal Ecology誌に2019年10月3日にオンライン公表されました。)

 

写真1:ドングリを持ち運ぼうとするアカネズミ

写真1:ドングリを持ち運ぼうとするアカネズミ

 

図1:アカネズミの肝臓におけるタンニン解毒能力と気温との関係

図1:アカネズミの肝臓におけるタンニン解毒能力と気温との関係。気温が20℃の時は解毒に67.1分かかるが、気温が10℃になると37.5分で解毒できるようになり、解毒能力が向上します(イラスト:柏木 牧子)

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【研究担当者】
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