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将来雨が減少したら熱帯雨林の巨木はどう反応するか野外実験で検証

2020年1月17日掲載

論文名

Limited stomatal regulation of the largest-size class of Dryobalanops aromatica in a Bornean tropical rainforest in response to artificial soil moisture reduction(ボルネオ熱帯雨林における雨水遮断実験による土壌水分低下に対するDryobalanops aromatica巨大高木の限定的な気孔応答)

著者(所属)

吉藤 奈津子(森林防災研究領域)、熊谷 朝臣(東京大学)、市栄 智明(高知大学)、久米 朋宣(九州大学)、立石 麻紀子(京都大学)、井上 裕太(植物生態研究領域)、米山 仰(高知大学)、中静 透(総合地球環境学研究所)

掲載誌

Journal of Plant Research、December 2019 DOI:10.1007/s10265-019-01161-3(外部サイトへリンク)

内容紹介

気候変動が森林に与える影響は世界的に関心の高い課題の一つです。東南アジアの熱帯雨林は平常は一年中湿潤な環境にありますが、気候変動に伴い将来強い乾燥に曝される可能性があると指摘されています。乾燥に対し熱帯雨林の巨大高木がどのように応答するかを調べるため、大規模な野外実験を行いました。マレーシア・ボルネオ島の熱帯雨林に生育するフタバガキ科の巨大高木(樹高38-53m)の根元に直径30mの傘状にビニールシートを張り、雨水が地面に浸み込むのを防ぐことで人工的に土壌を乾燥させ、樹木の水利用の変化を調べました。

樹木の葉には気孔と呼ばれる小さな穴があり、光合成に必要な二酸化炭素を取り込むと同時に、樹体内の水分を水蒸気として放出しています(これを蒸散と呼びます)。樹木は蒸散によって水分を失い過ぎないよう環境条件等に応じて気孔の開き具合を調節しますが、調節の程度や感度は樹木によって異なります。今回調べた巨大高木は、土壌が乾燥しても気孔の開き具合の調節は限定的で、傘を設置しない自然状態のものと比べて大きな違いは見られませんでした。一方、土壌から葉までの樹木全体の水の流れやすさが低下しました。この結果はこの巨大高木が強い乾燥に対する耐性が高くないことを示唆しています。このことは、気候変動によって将来強い乾燥が生じた場合に、東南アジアの熱帯雨林生態系がどのように応答し変化するかを知る上で重要な情報となります。

(本研究は2019年12月19日にJournal of Plant Research誌にオンライン公表されました。)

 

 

図1:雨水遮断実験の装置

図1:雨水遮断実験の装置

写真:雨水遮断実験装置の傘状ビニールシート

写真:雨水遮断実験装置の傘状ビニールシート

 

図2:実験結果の概念図

図2:実験結果の概念図

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