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ドングリの結実周期はこの40年で短くなった

2020年3月13日掲載

論文名

Decadal changes in masting behaviour of oak trees with rising temperature(気温上昇にともなうナラ類豊凶性の年代変化)

著者(所属)

柴田 銃江(森林植生研究領域)、正木 隆(企画部)、八木橋 勉(森林植生研究領域)、島田 卓哉(野生動物研究領域)、齊藤 隆(北海道大学)

掲載誌

Journal of Ecology、British Ecological Society DOI:10.1111/1365-2745.13337(外部サイトへリンク)

内容紹介

堅果(いわゆるドングリ)の豊凶(異なる個体の間で同調した結実年変動)は、ブナ科樹木更新の規模やタイミングのほか、堅果を餌とする野生動物の個体数の変動にも影響を与えます。森林総合研究所では、東北地方の北上山地で、1980年から40年間にわたり種子トラップを使ってミズナラの豊凶を調べるための結実状況の観測を行ってきました(写真)。これまでの観測データをまとめたところ、近年になるに従い結実数が増え、豊凶周期も3~4年から2年へと短くなっていることが明らかになりました(図1)。さらに中長期的な結実数の変化と開花期および着葉期の気温の上昇傾向(約40年間で0.8℃増)がよく対応していたことから(図2)、気温上昇による受粉成功率の向上や、堅果生産に使えるエネルギー量の増加が、豊凶周期の短縮に関係していると考えられます。

このように長期的に観測を続ける事によって、気候変動等にともなう森林生態系のダイナミックな変化が見えてきました。今回の成果は、中長期的な広葉樹林の種子生産予測や、それに伴う天然更新技術への応用が期待できるほか、種子を食べる野生動物の生息環境評価を行う上でも重要な情報となります。

(本研究は2019年12月9日にJournal of Ecology誌にオンライン公表されました。)

 

写真:中居村ミズナラ試験地写真:ミズナラ堅果

写真:中居村ミズナラ試験地(左)とミズナラ堅果(右)

ミズナラの豊凶性を知るため、毎年、種子トラップ(白い漏斗状のネット)に落下した堅果を計数している。

 

図1:堅果の結実数推移

図1:堅果の結実数推移

各種子トラップに落下した堅果数の平均値を結実数として示した(原著論文から転載)。

 

図2:中長期的な気温変化と結実数との関係

図2:中長期的な気温変化と結実数との関係

着葉期の月平均気温の20年移動平均値と、堅果数のそれとの関係を示した(原著論文から転載)。

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【研究担当者】
森林総合研究所 森林植生研究領域 柴田 銃江
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