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断面の大きな梁をより安全に使うには

2020年3月30日掲載

論文名

製材品の曲げ強度における寸法効果パラメータの検討

著者(所属)

井道 裕史・加藤 英雄・長尾 博文(構造利用研究領域)

掲載誌

森林総合研究所研究報告、19巻1号、森林総合研究所、2020年3月

内容紹介

わが国の人工林は、その大半が一般的な主伐期である50年生を超え、大径化が進んでいます。そのため、柱材だけでなく梁など、より大きな材せい(部材断面のうちの長辺)の製材品を生産することが可能となってきました。一方、木材は、材せいが大きくなるほど単位断面積当たりの強度は小さくなることが知られています。これは、材せいが大きくなると節など強度的な欠点が含まれる確率が高くなるためです。しかし、わが国の製材品では、材せいと強度の関係が、しっかりとわかっていませんでした。

森林総合研究所では、全国の公立試験研究機関から製材品の強度試験データを提供してもらい、強度データベースとしてまとめています。このデータベースを使って、スギ、アカマツ、ベイマツの製材品約10000本のデータから、材せいと曲げ強度との関係を調べました。その結果、製材品の材せいが150mmから300mmに増加すると、曲げ強度は7〜8割に低下することがわかりました。この結果に基づき、材せいによる曲げ強度の低減係数を提案しました。

現在の設計で使われる製材品の曲げ強度(基準強度)は、材せいが150mm程度のものを想定しています。しかし、それ以上の材せいを持つ製材品では、基準強度を満たさないものが出てくるおそれがあります。そのため、本研究で提案した低減係数を基準強度に乗じることにより、より安全に木質構造物の設計ができるようになります。

 

(本研究は2020年3月に森林総合研究所研究報告に公表されました。)

 

写真:材せいが300mmのスギ製材品の曲げ試験の様子

写真:材せいが300mmのスギ製材品の曲げ試験の様子。

 

図:材せいと、データベースによる曲げ強度と建築基準法による基準強度の比との関係

図:材せいと、データベースによる曲げ強度と建築基準法による基準強度の比との関係
各樹種の記号の一つずつは複数の試験体の結果をまとめた代表値を示しています。材せいが150mmを超えると、データベースから得られた曲げ強度が基準強度よりも小さくなっていることがわかります。

お問い合わせ先

【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 原田 寿郎
【研究担当者】
森林総合研究所 構造利用研究領域 井道 裕史
【広報担当者】
森林総合研究所 広報普及科広報係
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