研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2020年紹介分 > 低分子リグニンを有用物質へ変換する微生物の代謝制御システムを解明しました
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2020年5月26日掲載
論文名 |
Regulation of vanillate and syringate catabolism by a MarR-type transcriptional regulator DesR in Sphingobium sp. SYK-6(Sphingobium sp. SYK-6株のバニリン酸とシリンガ酸代謝はMarR型転写制御因子DesRによって制御される) |
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著者(所属) |
荒木 拓馬(森林資源化学研究領域)、梅田 周佑・上村 直史・笠井 大輔・熊野 修太・阿部 友邦・川津 風花(長岡技術科学大学)、大塚 祐一郎・中村 雅哉(森林資源化学研究領域)、片山 義博(日本大学)、福田 雅夫(中部大学)、政井 英司(長岡技術科学大学) |
掲載誌 |
Scientific Reports、9:18036、December 2019 DOI:10.1038/s41598-019-54490-7(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
資源循環型社会の形成に向けて、木材の効果的な利用が求められています。木材の主要構成成分の一つであるリグニンは、地球上に最も豊富に存在する芳香族ポリマーであるため、その有効利用に期待が寄せられています。近年、リグニンを化学処理することで得られるバニリン酸やシリンガ酸といった低分子芳香族化合物から微生物発酵により2-ピロン-4,6-ジカルボン酸(PDC)のようなポリエステル原料となる化学物質を製造する技術の開発が盛んに進められており、低分子リグニンの発酵に関わる微生物の代謝機能の解明が求められています。 そこで我々は、低分子リグニン分解微生物Sphingobium sp. SYK-6株を対象に、本株のバニリン酸・シリンガ酸分解に関わる酵素遺伝子がmRNAに転写される際にどのような制御を受けるのかを調査しました。その結果、SYK-6株のバニリン酸・シリンガ酸代謝に関与するタンパク質LigM、そしてシリンガ酸代謝に関与するタンパク質DesBの転写は転写制御タンパク質DesRによって抑制されていることが明らかとなりました。さらに、このDesRによる抑制はバニリン酸またはシリンガ酸の存在下で解除されることも明らかとなりました。 SYK-6株は、リグニン由来のバニリン酸・シリンガ酸代謝の下流で石油起源ポリエステル原料の代替となるPDCを産生します。今回得られた成果をもとに、SYK-6株の代謝機構を改変し、リグニンからの有用物質生産システムの開発を推進します。
(本研究は2019年12月にScientific Reports で公表されました。)
図. Sphingobium sp. SYK-6株におけるバニリン酸・シリンガ酸代謝酵素遺伝子の転写制御システム。 |
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