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大発生するシャクガの幼虫に感染する新種のウイルスを発見

2020年6月22日掲載

論文名

A new cypovirus from the Japanese peppered moth, Biston robustus (トビモンオオエダシャクから分離された新しいサイポウイルス)

著者(所属)

高務 淳(森林昆虫研究領域)

掲載誌

Journal of Invertebrate Pathology、Elsevier、 June 2020 DOI:10.1016/j.jip.2020.107417(外部サイトへリンク)

内容紹介

トビモンオオエダシャクは蛾の仲間で、その幼虫は多くの種類の樹木の葉を食害します。東京都の島嶼地域では、本種がしばしば大発生してツバキの葉を食べつくし、椿油生産に大打撃を与えます。ところが、本種に使用可能な防除剤はごく限られています。また、椿油の生産を目的としたツバキ園では、化学合成農薬の使用はできないため、薬剤に頼らない大発生への対応策が求められています。

今回、原因不明で死亡していたこの蛾の幼虫から、新種のウイルスを発見し、分離しました。電子顕微鏡による形態観察や、全遺伝情報などの解析から、細胞質多角体病ウイルス(CPV)の一種であり、新種であることが明らかになりました。また、発見したCPVを、カイコガ幼虫を用いて増殖する方法も開発しました。

CPVは、昆虫を中心とした節足動物のみに見出されるウイルスで、数種のCPVは、我が国を含むさまざまな国で害虫防除剤として使用され、大きな成果を収めてきました。昆虫に感染するウイルスを防除剤として開発するためには、宿主である昆虫を飼育してウイルスを増殖する必要がありますが、トビモンオオエダシャクの飼育法は確立されていませんでした。しかしこの研究により、カイコガ幼虫を用いて本CPVを増殖し、トビモンオオエダシャクの防除剤として開発する道を拓くことができました。今後は安全性などにも配慮しつつ実用化を進めるための研究が必要です。
 

(本研究は2020年6月にJournal of Invertebrate Pathologyで公表されました。)

 

写真1:トビモンオオエダシャクの幼虫

写真1:トビモンオオエダシャクの幼虫(森林生物情報データベースより)

 

写真2:発見したウイルス
発見したウイルス。直径約65ナノメーターの球形の粒子。1ナノメーターは、1ミリメーターの百万分の一。
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