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放射性セシウム濃度は樹冠内の枝葉の高さで異なる

2020年11月13日掲載

論文名

Vertical distribution of radiocesium concentrations among crown positions and year-to-year variation in four major tree species after the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant accident(福島第一原発事故後の4樹種の樹冠位置間での垂直方向の放射性セシウムの分布と年変動)

著者(所属)

田中 憲蔵(植物生態研究領域)、齊藤 哲(関西支所)、荒木 眞岳(植物生態研究領域)、梶本 卓也(東北支所)

掲載誌

Journal of Environmental Radioactivity、Elsevier、2020年10月 DOI:10.1016/j.jenvrad.2020.106447(外部サイトへリンク)

内容紹介

福島第一原発事故により大気中に放出された放射性セシウム137の一部は、樹木の葉や枝に付着した後、落葉や落枝などとともに徐々に落葉層や土壌に移動しました。土壌に移動した放射性セシウムの一部は、再び樹木に吸収されて枝や葉に移動すると考えられています。このような放射性セシウムの森林内での動態を理解するには、枝や葉の成長と脱落が繰り返される樹冠内で、枝葉が付いている高さやその年齢と放射性セシウムの濃度との関係を知ることが重要です。そこで、スギ、ヒノキ、アカマツ、コナラについて、樹冠の上部、中部、下部のそれぞれから枝と葉を採取し、事故から最長8年間にわたって放射性セシウム濃度を調べました。

毎年作られる新しい枝葉(当年葉と当年枝)では、樹冠内の位置による濃度変化のパターンは種間で異なっていました。例えば当年葉については、スギでは下部の方が高く、ヒノキでは逆に上部の方が高くなりました。一方、アカマツやコナラでは樹冠内の位置による違いは見出せませんでした。これらの種間差は、樹冠内での養分の分布特性や葉の寿命などが関係している可能性があります。また、古い枝葉(旧葉と旧枝)では、どの樹種でも下部の方が上部より高く、この傾向は事故から時間が経過しても変わりませんでした。これは、樹冠上部の方が明るいために成長が良く、事故で直接汚染された枝葉の入れ替わりが活発なために放射性セシウム濃度が低下したと考えられました。このような、樹冠内の枝葉の放射性セシウム濃度の分布に関する知見は、森林内での放射性セシウムの動きを理解し、将来予測を行う上で役立ちます。

 

(本研究は2020年10月にJournal of Environmental Radioactivityでオンライン公開されました。)

 

写真:試料木の伐採と枝や葉の仕分けの様子

写真:試料木の伐採(左)と枝や葉の仕分け(右)の様子。
樹木を伐採後、樹冠の高さごとに葉や枝の試料を採取し、当年葉や古い葉、枝など分けて放射性セシウム濃度を測定しました。

 

図:当年葉と旧枝の樹冠位置による放射性セシウム濃度の分布

図:当年葉と旧枝の樹冠位置による放射性セシウム濃度の分布。
当年葉の放射性セシウム濃度の分布パターンには種間差があり、スギでは樹冠下部で、ヒノキでは樹冠上部で高くなりました(左、スギとヒノキ)。一方、1年以上の組織を含む古い枝は、全樹種とも樹冠下部で高くなりました(右、アカマツとコナラの例)。

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森林総合研究所 研究ディレクター 大丸 裕武
【研究担当者】
森林総合研究所 植物生態研究領域 田中 憲蔵
【広報担当者】
森林総合研究所 広報普及科広報係
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