研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2020年紹介分 > マツノザイセンチュウの祖先は広葉樹から針葉樹へと運ばれてきた
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2020年12月7日掲載
論文名 |
Potential vector switching in the evolution of Bursaphelenchus xylophilus group nematodes (Nematoda: Aphelenchoididae)(マツノザイセンチュウ近縁種群の進化過程において媒介者の乗り換えが起こった可能性) |
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著者(所属) |
前原 紀敏(森林昆虫研究領域)、神崎 菜摘(関西支所)、相川 拓也(東北支所)、中村 克典(東北支所) |
掲載誌 |
Ecology and Evolution、Wiley、December 2020 DOI:10.1002/ece3.7033(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
マツノザイセンチュウはマツ材線虫病(マツ枯れ)の病原体で、マツ類を枯らします。この線虫の近縁種としては、被陰による光不足などで弱ったマツ類で生活するニセマツノザイセンチュウや、広葉樹の衰弱木に生息するクワノザイセンチュウなどが知られています。これら近縁種は、たとえ健全な木に侵入したとしても枯らすことはありません。線虫のDNA を解析した研究により、マツノザイセンチュウは広葉樹に生息する線虫から進化してきたことが分かっていますが、どのようにしてこのような進化が起こりえたのかは謎でした。 線虫は自力では遠くまで移動できないため、マツノザイセンチュウならマツノマダラカミキリ(写真左)、クワノザイセンチュウならキボシカミキリというように、相性の良い特定の媒介者に運んでもらいます。今回、これまでに広葉樹とマツ類の両方から見つかっているドウイザイセンチュウ(注)のカミキリムシに対する相性を調べたところ、同様に広葉樹とマツ類の両方を利用できるビロウドカミキリ(写真右)に加えて、マツ類だけを利用するマツノマダラカミキリにも運んでもらえることが分かりました。 このことから、ドウイザイセンチュウの祖先がビロウドカミキリによって広葉樹からマツ類へと運ばれてきた後、マツノマダラカミキリへと乗り換えて、マツノザイセンチュウの祖先となる種へと進化した可能性が考えられます。この進化の過程でマツノザイセンチュウがマツ類を枯らすようになった理由をさらに解明することにより、マツ枯れの防除手法を高度化することにもつながります。 注:Bursaphelenchus doui(学名)というマツノザイセンチュウの近縁種。日本にも生息するが和名がなく、ここではドウイザイセンチュウと仮称する。
(本研究は2020年12月にEcology and Evolutionでオンライン公開されました。)
写真:マツ類だけを利用するマツノマダラカミキリ雌成虫(左)と広葉樹とマツ類の両方を利用するビロウドカミキリ雄成虫(右)。この写真のビロウドカミキリはクワの葉を食べている。 |
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