研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2021年紹介分 > カンボジアの砂地林樹種の萌芽能力は薪材利用の伐採後の森林再生には不十分である
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2021年1月8日掲載
論文名 |
Stump size and resprouting ability: response to selective cutting in a sandy dry dipterocarp forest, central Cambodia.(伐根直径と萌芽再生の関係:中央カンボジアの砂質乾燥フタバガキ林における択伐への反応) |
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著者(所属) |
伊藤 江利子(北海道支所)、Bora TITH(カンボジア森林局) |
掲載誌 |
Cambodian Journal of Natural History, Volume 2020, No.2, p.34-41、2020年12月 |
内容紹介 |
発展途上国においては、森林の急激な減少が懸念されています。私たちは、森林開発が急速に進むカンボジアで、2002年から森林の動態調査を続けています。調査地のひとつである砂地林は、沖積性の貧栄養の砂質土壌の上に成立し、フタバガキ科のDipterocarpus obtusifoliusが優占する、種多様性に乏しい森林です。 この調査地では優占種であるD. obtusifoliusを中心に、2014年に用材目的の大径木択伐が、2019年には薪材目的の中~小径木択伐が行われました。択伐後の萌芽再生能力を調査したところ、萌芽の有無は切り株の大きさと明瞭な関係があり、切り株の直径が30cmを超えると萌芽再生能力はないことが明らかになりました。直径30cm以下の小径木であっても萌芽の発生は約半数の切り株に留まり、萌芽更新のみでは森林再生に不十分なことが示されました。また、薪材目的の択伐により開花個体がほぼなくなってしまい、近い将来の種子供給が期待できないことも明らかになりました。 この研究により、薪材利用の伐採が砂地林の持続可能性を脅かす最大の脅威であり、現状の森林利用形態のままでは森林再生が困難であることが分かりました。持続可能な森林利用のためには、萌芽更新と実生更新の双方の更新動態の特徴を踏まえた管理を行うことが重要であり、本研究の成果は新たな管理指針の作成に役立ちます。
(本研究は2020年12月にCambodian Journal of Natural Historyで公表されました。)
写真:Dipterocarpus obtusifoliusの切り株。(左)切り株の地際から萌芽した様子。1つの切り株から1~2本の萌芽が発生する。(右)萌芽せず枯死した様子。
図:Dipterocarpus obtusifoliusの萌芽能力と切り株の大きさの関係。切り株の直径が30cmを超えると萌芽再生能力はない。
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