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水生昆虫等に含まれる放射性セシウム濃度の推移は高汚染地域と低汚染地域で異なる

2021年1月25日掲載

論文名

Difference of ecological half-life and transfer coefficient in aquatic invertebrates between high and low radiocesium contaminated streams(高汚染地域と低汚染地域における渓流性底生動物の生態学的半減期と移行係数について)

著者(所属)

吉村 真由美(関西支所)、赤間 亮夫(震災復興・放射性物質研究拠点)

掲載誌

Scientific Reports 10、21819、11 December 2020 DOI:10.1038/s41598-020-78844-8(外部サイトへリンク)

内容紹介

原発事故により、放射性物質が環境中に放出され、渓流の落ち葉、藻類、砂、底生動物、魚などが放射性セシウムによって汚染されました。放射性セシウムは長期にわたって川の生態系に大きな影響を与えるため、川の中における拡散と崩壊のメカニズムを明らかにしておく必要があります。

渓流の落ち葉、藻類、砂、底生動物における放射性セシウム濃度の生態学的半減期と空間線量率との関係を調べたところ、空間線量率が低い地域ほど放射性セシウム濃度の生態学的半減期は長くなりました。また、空間線量率が低い地域では、藻類から底生動物への移行係数が高くなりました。一方、藻類の放射性セシウム濃度と流速との関係を調べたところ、空間線量率の高い地域では、流速が大きいほど放射性セシウム濃度は低くなりましたが、空間線量率の低い地域では、逆に流速が大きいほど放射性セシウム濃度が高くなる傾向が認められました。これらの結果は、放射性セシウムによる汚染が長く続くことを意味しています。

放射性セシウム濃度は、汚染度が高い地域では指数関数的に減少しますが、汚染度が低くなると、流速などの様々な環境要因の影響が顕在化して、単純な減少傾向を示さなくなるのだと考えられます。このように、汚染度が低い地域の渓流生態系の放射性セシウム濃度を理解するには、流速が一つの鍵になることを示唆しています。

(本研究は2020年12月Scientific Reportsにおいてオンライン公表されました。)

 

図1:調査地

図1:調査地

 

図2:調査地の空間線量率と水生昆虫の生態学的半減期との関係

図2:調査地の空間線量率と水生昆虫の生態学的半減期との関係
空間線量率が高い地点で生態学的半減期は短く、空間線量率が低い地点で生態学的半減期は長くなりました。空間線量率が高い場所もいずれ低くなることから、半減期も長くなっていき、汚染が長く続くと推察されます。

 

【用語解説】

放射性物質の濃度が、半分になるまでの時間を「半減期」といいます。半減期は、大きくみると物理学的半減期、生物学的半減期、生態学的半減期の3つにわけられます。物理学的半減期は、放射性物質が半分になるまでの期間のことで、セシウム137の場合は、約30年になります。生物学的半減期は、放射性物質が存在しない環境下で体内に取り込まれた放射性物質が代謝等による排出によって半分になるまでの時間のことで、セシウム137の場合は、100日程度になります。生態学的半減期は、放射性物質が存在する環境下において、体内に存在する放射性物質が実際に半分になるまでの時間のことです。生態学的半減期は、生物学的半減期と異なり、放射性物質の環境内での動き方や生態系を通した生き物への取り込まれ方によって、時間とともに変化します。

お問い合わせ先

【研究推進責任者】
森林総合研究所 研究ディレクター 大丸 裕武
【研究担当者】
森林総合研究所 関西支所 吉村 真由美
【広報担当者】
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