研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2021年紹介分 > 芽生えから大径木に至るまで多様な広葉樹の枯死率の推定値を公開しました
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2021年8月10日掲載
論文名 |
Interspecific variation in mortality and growth and changes in their relationship with size class in an old-growth temperate forest(老齢な温帯林における死亡率と成長率の種間変異とサイズクラスに応じた関係性の変化) |
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著者(所属) |
正木 隆(研究ディレクタ―)、北川 涼(関西支所)、中静 透(理事長)、柴田 銃江(森林植生研究領域)、田中 浩(日本森林技術協会) |
掲載誌 |
Ecology and Evolution 2021年6月 DOI:10.1002/ece3.7720(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
樹木の枯死は、もちろん樹木自身にとっての一大事ですが、大木となってからの枯死は森林生態系にもたらすインパクトも甚大です。しかし、寿命の長い樹木のその生涯の中での枯死率の推移を知ることは簡単ではありません。なるべく広い面積で長い年月をかけ、樹木の枯死という稀な出来事のデータを集め、統計処理を行う必要があります。 今回、北茨城の落葉広葉樹林の6haの試験地で得た1987~2005年のデータを使い、芽生えから直径80cm超の大木まで樹木の一生を12ステージに分け、主な樹種注1)の枯死率等をステージごとに推定しました。推定値はデータセットにとりまとめ、誰でも自由に使えるよう論文発表と同時にリポジトリ注2)で公開しました(図1)。 このデータから各ステージの枯死率をグラフに示します(図2)。全体的に小径木前のステージで枯死率が高く、その後低下し、大木になると再び高まることがわかります。種の特徴も、コナラは若いステージで枯死率が相対的に高いが大木のステージでは他種より低いこと、イヌブナは概ねその逆のパターンであること、イタヤカエデは生涯を通じて枯死率が低めであること、直径約30cmまでしか成長しないハクウンボクはその直前まで中庸なパターンを示すこと、などを見て取れます。 今回の推定値は2005年までのデータに基づきます。その後の気候変動や病虫獣害の影響などを評価するための参考値となるでしょう。 注1)本研究ではミズメ、サワシバ、クマシデ、イヌシデ、アカシデ、ブナ、イヌブナ、ミズナラ、コナラ、クリ、カスミザクラ、オオモミジ、ウリハダカエデ、イタヤカエデ、ミズキ、ハリギリ、ハクウンボクの17樹種を対象としました。 注2)リポジトリとはインターネット空間での電子ファイルの保管場所のことです。今回のデータセットは、https://doi.org/10.5061/dryad.mpg4f4r05(外部サイトへリンク)に格納し、公開されています。
(本研究は、2021年6月Ecology and Evolutionにオンライン公開されました。)
図1 ダウンロードしたファイルをMicrosoft® Excel® 2019で読み込んだスクリーンショット。次の図は矢印で示したデータを使って作図しました。このファイルは以下からダウンロードしたものです:Masaki T, Shibata M, Nakashizuka T & Tanaka H (2021) Annual mortality and growth index for 17 tree species across entire size classes in the Ogawa Forest Reserve, an old-growth deciduous forest, central Japan, Dryad, Dataset, https://doi.org/10.5061/dryad.mpg4f4r05(外部サイトへリンク)
図2 北茨城の成熟した落葉広葉樹林における各樹種の各ステージでの年間の枯死率。 |
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