研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2021年紹介分 > 人為撹乱で更新した絶滅危惧樹種ハナノキが教えてくれたこと
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2021年12月24日掲載
論文名 |
宅地造成地法面における絶滅危惧種ハナノキの実生更新の成功と、その更新特性について |
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著者(所属) |
野村 勝重・野村 礼子(みどりの会)、玉木 一郎(岐阜県森林文化アカデミー)、菊地 賢(北海道支所) |
掲載誌 |
保全生態学研究 26 297-305、日本生態学会 2021年8月 DOI:10.18960/hozen.2024(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
中部地方の丘陵地帯の湿地などに生育する雌雄異株の絶滅危惧種ハナノキは、その自生地の多くで次世代の更新不良による個体群の衰退が心配されています。2011年、私たちは岐阜県内の住宅造成地の低木の繁る法面(1996年着工、2000年竣工)にて、ハナノキの稚樹が40本以上生育しているのを発見しました。そこで、これをハナノキの稚樹更新の貴重な事例と捉え、9年間、それらを対象に保全管理の成否の指標となる開花状況を調査しました。 この調査地では、ハナノキ稚樹は法面の中でも林縁に近い箇所に生育して最も大きい個体は樹高約14mに達し、一部の個体は調査期間中に開花サイズに達していました。仔細に調べると、雄株は樹高8~9mの段階で開花を開始し、雌株は少し遅れて樹高約10mで開花し始めることがわかりました。 これらのことから、造成地など人為的に創出された場所でも条件が揃えばハナノキの実生の定着が可能であり、さらに、定着した実生が更新に成功したといえる開花サイズに到達しうることもわかりました。このようなハナノキの更新特性に関する知見は、更新に適した環境を人工的につくることなど、ハナノキの保全手法の開発に大きく寄与するものです。
(本研究は2021年8月に保全生態学研究において公表されました。)
写真:ハナノキの雄花(上)および雌花(下) |
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