研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2022年紹介分 > 永久凍土林の地下部炭素動態における下層植生の重要性が明らかに
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2022年2月16日掲載
論文名 |
Fine root growth of black spruce trees and understory plants in a permafrost forest along a north-facing slope in Interior Alaska(アラスカ内陸部の北向き斜面上の永久凍土林におけるクロトウヒと下層植生の細根成長) |
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著者(所属) |
野口 享太郎(東北支所)、松浦 陽次郎(企画部)、森下 智陽(東北支所)、鳥山 淳平(九州支所)、Yongwon Kim(アラスカ大学) |
掲載誌 |
Frontiers in Plant Science、12、769710、2021年11月 DOI:10.3389/fpls.2021.769710(外部サイトへリンク) |
内容紹介 |
アラスカ内陸部やカナダ北西部、中央・東シベリアに広く分布する永久凍土林は、凍結した土壌に莫大な量の炭素を蓄積しており、地球上の炭素動態を理解する上で重要な生態系です。土壌中の炭素は、光合成により植物が固定した炭素が、主に落葉や細根注1)の枯死により供給されたものです。しかし、場所により異なる凍土の状態が、落葉量や細根の成長量に及ぼす影響については、よく分かっていませんでした。永久凍土の表層部分は夏になると融けることが知られていますが、アラスカ内陸部の場合、一般に凍土の融けやすい斜面上部と比べて、凍土の融けにくい斜面下部ではクロトウヒの成長が抑制されます(写真1)。そこで本研究では、斜面上部、中部、下部のクロトウヒ林の落葉量と細根成長量を比較しました。 その結果、落葉量が斜面下部ほど小さかったのに対して、細根成長量は斜面下部ほど大きく落葉量の4倍もありました(図1)。また、斜面上部では新たに成長した細根の約8割がクロトウヒの細根だったのに対し、斜面下部では約7割がツツジ科低木など下層植生の細根でした(図1)。これらの下層植生は見た目には小さく(写真2)、地上部現存量注2)が全体に占める割合は斜面上部で1%未満、斜面下部でも10%程度でしたが(図2)、その細根が地下部への炭素の供給において重要な役割を担うことが明らかになりました。 注1)直径2mm以下の根。 注2)一定面積に存在する地上部の重量。
(本研究は、2021年11月、Frontiers in Plant Scienceにおいてオンライン公表されました。)
写真2:永久凍土林でよく見られるツツジ科低木(青矢印、イソツツジ Rhododendron tomentosum (Ledum palustre);黄矢印、コケモモ Vaccinium vitis-idaea)
図1:クロトウヒおよび下層植生の落葉量と細根成長量(1年間の値)。斜面下部に行くほど落葉量は減少し、逆に細根成長量は増加する。また、斜面下部では下層植生の細根成長量がクロトウヒよりも大きくなる。記載論文のデータより作図。
図2:クロトウヒおよび下層植生の地上部現存量。クロトウヒの現存量は斜面下部に行くほど減少する。下層植生の現存量は斜面中部、下部のほうが上部よりも大きいが、全体に占める割合は斜面下部でも10%程度。記載論文のデータより作図。 |
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