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幹の成長を加味し樹液流をより正確に測定、水源かん養機能をより正確に把握

掲載日:2022年4月25日

樹木の蒸散量を知るため「樹液流」を計測する「熱消散法」について、幹の成長速度を加味して係数を修正すれば、より正確に計測できることが分かりました。正確な樹液流測定によって、生活や産業に貢献している水源かん養機能をより確実に把握できるようになります。
熱消散法は樹木を伐採せず、幹に挿したプローブ(探針)で熱を発生させ、温度変化から樹液流の速さを検出する方法(図1)で、世界的に普及しています。しかし、樹液流が少なく見積もられてしまう傾向が海外の研究で確認され、その原因は分かっていませんでした。
そこで、日本から台湾にかけ計6か所のスギ・ヒノキ林で熱消散法の正確さを検討したところ、幹の成長の速さ(胸高直径/樹齢)によって係数が変化することが原因であると特定しました(図2)。この関係を考慮して係数を修正すれば、より正しい樹液流の計測が可能となります。
森林は水源かん養機能を持っており、人間の日常生活はもちろん、農業や工業にも大きな貢献をしています。森林は光合成を行う際に蒸散として水を消費するので、その量を正確に把握することは、水源かん養機能の維持・向上のために必要不可欠です。

(本研究は2022年4月にTrees-Structure and Functionにおいて公表されました。)

図1:樹木の蒸散と樹液流の関係

図1:樹木の蒸散と樹液流の関係。根で吸水された水が、樹液流となって上昇し、葉から大気中へ蒸発します。熱消散法は、樹木に挿したプローブを使って微弱な熱を発生させ、変化する温度から樹液の速さを検出します。

図2:幹の成長の速さと熱消散法の係数の関係

図2:幹の成長の速さと熱消散法の係数の関係。幹が太るスピードが速いスギ・ヒノキほど、係数が大きくなることを示しています。スギとヒノキの幹の直径と、樹齢が分かれば、この図に示した比例関係を使って、より正しい係数を求めることが可能になります。なお、元データはShinohara et al. (2022)から引用しています。

  • 論文名
    Are calibrations of sap flow measurements based on thermal dissipation needed for each sample in Japanese cedar and cypress trees? (熱消散法に基づく樹液流測定値に対する検定はスギとヒノキの個体毎に必要か?)
  • 著者名(所属)
    篠原 慶規(宮崎大学)、飯田 真一・小田 智基(森林防災研究領域)、片山 歩美(九州大学)、鶴田 健二(滋賀県琵琶湖環境科学研究センター)、佐藤 貴紀・田中 延亮(東京大学)、Man-Ping Su(国立台湾大学)、Sophie Laplace(国立台湾大学)、雉子谷 佳男(宮崎大学)、久米 朋宣(九州大学)
  • 掲載誌
    Trees-Structure and Function、Springer、2022年4月12日 DOI:10.1007/s00468-022-02283-3(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 玉井 幸治
  • 研究担当者
    森林防災研究領域 飯田 真一

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