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人工林伐採時に残した広葉樹がコウモリ類の活動量低下を抑制

掲載日:2022年9月5日

広葉樹が混じる針葉樹人工林を伐採する際に広葉樹を残すことで、森林にすむコウモリ類*1の活動量の低下を抑制できることが、北海道のトドマツ人工林での調査で分かりました。広葉樹がコウモリ類の活動・休息の場所を提供し、伐採による負の影響を緩和したとみられます。生物にとって重要な樹木等を残して伐採する「保持林業」(保残伐施業)が、人工林でのコウモリ類の保全にも役立つことが示唆されました。

トドマツ人工林の保持林業実証実験地において、カンバ類やミズナラなどの広葉樹を伐採地1haあたり50本残した「中量保持区」、同じく100本残した「大量保持区」、すべての樹木を伐採した「皆伐区」、何も伐採しない「未伐採人工林区」を調査対象としました(写真)。

それぞれの実験区で2019年の夏から秋にかけて、コウモリ類が移動中に発する声(通過音)を録音し、属*2によって異なる音の波形からどの属が何回通過したのかを調べました。そして、森林内部でゆっくり飛ぶ「林内種」、森林と開けた環境の境界付近での活動を好む「エッジ種」、開けた環境で直線的に速く飛ぶ「開放地種」に分けて活動量を推定し、比較しました。その結果、広葉樹を多く残すほど、伐採による林内種やエッジ種の活動量低下が抑えられることが明らかになりました(図)。

*1 森林にすむコウモリ類…日本国内に生息するコウモリ類の多くは、採食場所やねぐらとして森林を利用し、特に広葉樹を好むと考えられています。

*2 属…生物を分類する階級で、科よりも下、種よりも上の位置づけです。同じ属のコウモリ類は異なる種でもよく似た声を発するため、本研究では属を単位として扱いました。

(本研究は、2022年9月にForest Ecology and Managementにおいて公表されました。)

写真1:調査した保持林業の実証実験区の様子写真2:調査した保持林業の実証実験区の様子(中量保持区)写真3:調査した保持林業の実証実験区の様子(大量保持区)写真4:調査した保持林業の実証実験区の様子(未伐採人工林区)
写真:調査した保持林業の実証実験区の様子。
伐採地における広葉樹の保持の効果を調べるために、残した広葉樹の量が異なる中量保持区(50本/ha)と大量保持区(100本/ha)、そして比較対照としてすべての樹木を伐採した皆伐区と樹木を伐採していない未伐採人工林区において、自動録音機を用いてコウモリ類が移動中に発する声(通過音)を記録し、活動量を調べました。

図1:各実験区におけるコウモリ類出現した属の数図2:各実験区におけるコウモリ類林内種の活動量図3:各実験区におけるコウモリ類のエッジ種の活動量

図:各実験区におけるコウモリ類の出現属数と活動量。
調査と解析の結果、伐採による林内種やエッジ種の活動量の低下が広葉樹の保持によって軽減され、出現するコウモリ類の属が増加することが分かりました。図中の半透明の赤い丸は実際に記録された値を、黒い丸とバーは統計モデルによる平均値とその幅(95%信頼区間)を表し、異なるアルファベットは実験区間で有意な違いがあることを示しています。

※ 写真と図は、出版社から許可を得て、論文中の図を基に作成しました。

  • 論文名
    The response of bats to dispersed retention of broad-leaved trees in harvested conifer plantations in Hokkaido, northern Japan. (北海道の針葉樹人工林の伐採地における広葉樹の分散保持に対するコウモリ類の応答)
  • 著者名(所属)
    手島 菜花(北海道大学)、河村 和洋(野生動物研究領域)、赤坂 卓美(帯広畜産大学)、山中 聡(北海道支所)、中村 太士(北海道大学)
  • 掲載誌
    Forest Ecology and Management、Vol.519、120300、Elsevier 2022年9月 DOI:10.1016/j.foreco.2022.120300(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 正木 隆
  • 研究担当者
    野生動物研究領域 河村 和洋

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