研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2022年紹介分 > スギ心材色の明るさには遺伝が強く影響
ここから本文です。
掲載日:2022年10月11日
スギ中心部から得られる木材(心材)の色の明るさ(明度)は遺伝に強く左右されることが、クローン苗を使った生育実験と遺伝子解析で分かりました。心材の色は一般に遺伝子と生育環境の両方が関係して決まると考えられ、そのメカニズムを解明する上で重要な知見です。
九州地方のスギを交配して得た139個体の各々から挿し木でクローン(遺伝的に同一の個体)を増やし、139個体各3本の苗を気候や土壌条件の異なる茨城・千葉・熊本3県の試験地に植栽しました。約10年育成した後に伐採して、心材の色相・明度・彩度に関するデータを収集し、遺伝との関連を解析しました(写真)。
その結果、3試験地で平均すると、ゲノム上の26の遺伝領域が心材色に影響を与えていることが分かりました。また、明度は最も強く遺伝的に制御されていて、その違いの43.8%が遺伝によるものだったのに対し、生育環境による違いは極めて小さく2.4%でした。
心材は樹木の肥大成長に伴い幹の中心部に形成される組織で、細胞が死ぬ時に様々な物質が蓄積され、樹種によっては赤や黒などに材色が変化します。
注:心材色は、分光光度計を用いて分光反射率(400-700nm、間隔20nm)を測定し、CIELAB色空間におけるL*値(明度)、a*値(赤~緑色相)、b*値(黄~青色相)を数値化。
(本研究は、2022年7月、PLOS ONEにおいてオンライン公表されました。)
写真:3試験地におけるスギの心材の色。
3つの異なる生育環境(試験地)で生育したスギの心材の色の例として、2つのクローンを示しています。上段の写真は暗い色の心材が特徴的なクローン(各試験地で3個体)、下段の写真は明るい色の心材が特徴的なクローン(各試験地で2~3個体)です。材の明るさ(明度)は、クローン間の違い(遺伝的な違い)が大きく、生育環境(試験地)による違いが比較的小さいことがわかります。
お問い合わせ
Copyright © Forest Research and Management Organization. All rights reserved.