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掲載日:2022年10月14日
小笠原や琉球をはじめ、東南アジアに広く分布する常緑高木アカテツは、生息している島がかつて陸続きであり陸化した時期が古いほど、遺伝子の多様性(遺伝的多様性)が高いことが分かりました(写真)。大陸から島々に移住した植物がその遺伝的多様性をどのように維持しているのかを理解する上で有用な成果です。
島々の生物多様性に影響している島の面積・年齢・成り立ち・大陸との距離などの要因が樹木の遺伝的多様性にも寄与しているのか、八重山諸島、大東諸島、小笠原群島、硫黄列島に分布する計27集団のアカテツを使って調べました。
その結果、島の成り立ちにおいて、大陸とかつて陸続きだった「大陸島」の古い島々ほどアカテツの遺伝的多様性が高いことが分かりました(八重山諸島)。他方、大陸と陸続きになったことのない「海洋島」の若い島ほど多様性が低いことが認められました(硫黄列島)(図)。
海洋島では大陸島と比較して集団の祖先となった個体数が少ないこと、また新しい島では突然変異による新たな遺伝子の蓄積がないことが原因と考えられます。
(本研究は、2022年9月にPLOS ONEにおいてオンライン公開されました。)
写真:アカテツ(Planchonella obovata)。
新葉と葉裏は赤褐色の細かい毛を密生し、遠くからでも所在がすぐに分かります。小笠原諸島、琉球、台湾、東南アジアに広く分布しています。琉球では防潮、防風の目的で屋敷内に植えることがあります。
図:各地域における遺伝的多様性(各集団から同じ個体数を抽出した時に含まれる対立遺伝子数の期待値)。
括弧内は島の齢(陸地として出現したと推定される時期)、異なるアルファベットは地域間の遺伝的多様性に有意な差があることを示しています。
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