研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2022年紹介分 > 表層土壌の細菌類の組成と機能は斜面の上と下で大きく違う
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掲載日:2022年10月24日
急峻な源流域森林では、同じ斜面でも上部と下部で土壌の特性が違うために、表層土壌にすむ細菌の種類も上部と下部で大きく異なることが分かりました。これは、森林生態系の維持に貢献している土壌微生物の分布や機能についての理解を深める発見です。
研究グループは、2.3haの範囲で地形が大きく変わる皇都川支流の森林小流域(茨城県森林管理署管内北山国有林)で、53地点の表層土壌の細菌類の組成を測定し、細菌群集と環境条件との関係性を調べました。その結果、斜面の位置の変化に伴い細菌類の分類群が大きく入れ替わり、斜面上部と下部では共通して出現する分類群が非常に少ないことが明らかになりました(図)。また、土壌の特性は斜面上部ほど酸性で乾燥している傾向があり、統計解析の結果、斜面位置と関連するこれらの土壌特性が細菌群集の形成に大きく影響を及ぼしていることが分かりました。細菌類の分類群から推定された機能も斜面の位置で異なり、例えば、アンモニウム生成に関わる細菌が斜面上部から中部で、脱窒注1)に関わる細菌類が斜面下部で多く出現しました。本研究は、斜面位置による土壌特性の違いから、斜面位置ごとに機能の異なる独自の細菌群集が形成されていることを発見したものであり、さらに研究を進めることで、森林土壌の微生物の分布様式と、その機能への影響についての理解に大きく貢献するものと考えられます。
注1) 脱窒は、微生物の嫌気呼吸のひとつで、硝酸イオン(NO3-)や亜硝酸イオン(NO2-)がガス態の窒素化合物(一酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(N2O)および窒素ガス(N2))に還元される作用やプロセスのことです。
(本研究は、2022年7月にCatenaにおいてオンライン公開されました。)
図:本研究で明らかになった斜面位置ごとの土壌細菌類の組成の違いのイメージ図。
土壌細菌群集内の色の違いは異なる分類群であることを意味しています。斜面上部と下部では共通して出現する分類群はほとんどなく、大きく入れ替わっていることがわかりました。
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