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掲載日:2022年11月11日
根に共生して樹木の成長を支える菌根菌の多様性は、木を全て伐採する皆伐によって大きく失われます。一部の樹木を伐らずに長期にわたって残す「保持林業」が、この皆伐の負の影響を和らげることを明らかにしました。生物多様性の保全に配慮しつつ木材生産の両立を目指す森林管理のあり方を考える上で、保持林業が有効な選択肢の一つであることを支持する成果です。
保持林業による生物多様性の保全効果は、これまで主に欧米において実証されてきましたが、アジア地域の人工林ではほとんど検証されていません。そこで研究グループは、菌根菌の多様性におよぼす保持林業の効果を明らかにするため、北海道のトドマツ人工林に設定された大規模実証試験地で試験開始から4年後に調査を行いました(写真)。
間隔を空けて広葉樹をまばらに残すと、皆伐地よりも多くの種の菌根菌を維持できる傾向がありました(図)。さらに、残す広葉樹の本数が多ければ多いほど、維持できる菌根菌の種数も高くなる傾向がありました。
(本研究は、2022年11月にForest Ecology and Managementにおいてオンライン公開されました。)
写真(左):調査が行われた試験地
写真(右):根に共生する菌根菌の様子。茶色の根(*)から伸びている淡黄色に見える根の部分(矢印)に菌根菌が共生している(バーは1mmを示す)。
図:菌根菌の種数と残された木の密度との関係。青の点線は両者の関係性を示す対数近似曲線。
※ 図は出版社から許可を得て、論文中の図を基に作成しました。
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