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川底のヒメドロムシは土壌粒子・水深・流速などの環境に応じて生息場所を変える

掲載日:2022年11月14日

川底にすむ小さな昆虫ヒメドロムシ注1)の仲間は、土壌・水深・流速などの環境が少し変わるだけでそこから姿を消してしまうことが分かりました。ヒメドロムシは簡単に採取できることから、川の環境を知る良い指標になりそうです。

ヒメドロムシの仲間であるイブシアシナガドロムシ、アワツヤドロムシ、ヒメツヤドロムシの3種について、森林総合研究所と神戸大学大学院の研究グループは、2009年に兵庫県南東部を流れる武庫川の中流域で、それぞれ生息数と各種の環境との関係を調べました。

その結果、3種の幼虫・成虫とも夏場は、水深が浅く、川底土壌の粒子が粗い場所に多く生息していました。一方、冬場には3種の成虫は、川底土壌の粒子の粗さだけから影響を受けていました。

また、イブシアシナガドロムシ、ヒメツヤドロムシの成虫は夏場、流速や陸地からの距離にあまり左右されずに生息していましたが、アワツヤドロムシの生息には、より速い流れや陸地からの距離が必要となるなど、種によっては粒子の粗さ以外の環境によっても生息場所を変えることも分かりました(図)。

注1)ヒメドロムシ:ヒメドロムシ科に属し、体長は1~5ミリ程度。川底の石などにつかまって生息している。

本研究は、2022年11月、Journal of Insect Conservationにおいてオンライン公開されました。)

図:標準化偏回帰係数
図:夏場におけるヒメドロムシ3種(成虫)に対する各環境の影響度合いを表す「標準化偏回帰係数」。値が大きいほど影響が大きいことを示します。
―:影響を与える環境として選出されなかった。

  • 論文名
    Effect of environmental factors on the abundance of riffle beetles (Coleoptera: Elmidae) and co-inhabiting aquatic insects within a reach scale, in Japan(ヒメドロムシを中心とした水生昆虫の生息数に及ぼす環境要因の影響について)
  • 著者名(所属)
    藤原 淳一(神戸大学大学院、現在東京都在住)、前藤 薫(神戸大学大学院)、吉村 真由美(関西支所)
  • 掲載誌
    Journal of Insect Conservation、2022年11月 DOI:10.1007/s10841-022-00434-y(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター正木 隆
  • 研究担当者
    関西支所 吉村 真由美

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