ホーム > 研究紹介 > 研究成果 > 研究成果 2023年紹介分 > 豪雪地のスギ皆伐で増えた雪解け水、植栽後30年で元の水量に
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掲載日:2023年2月22日
豪雪地帯での雪融け水の流出(融雪流出)は、森林の皆伐後に一旦増加しますが、スギの植栽により約30年で元に戻ること、この回復はスギの材積量が元に戻るよりも早く起こることが分かりました。これは、融雪流出に対する伐採や植林など森林施業の影響が大きいことを示しており、豪雪地帯での水源かん養機能の理解や維持・向上のために役立つ成果です。
森林伐採が融雪流出に影響することは既に知られていましたが、年によって降雪量や気温などの気象条件も大きく変動するため、影響がいつまで続くのかは明らかにはなっていませんでした。研究グループは、豪雪地帯の山形県真室川町にある釜淵森林理水試験地(写真)注1)において、1939年から2005年までの67年間のデータを用いて、皆伐後の融雪流出に影響する要因を解析しました。
その結果、伐採した区域としなかった区域との比較により計算した融雪流出の増加量注2)は、スギ植栽から時間が経つほど小さく、降雪量の多い年ほど大きくなる傾向がありました(図)。融雪流出量は植栽から約30年で伐採前と同水準に戻りましたが、これはスギ林の材積量が伐採前に戻るよりも早い回復でした。その理由として樹木の成長により森林の葉量が増加した効果が考えられます。スギのような常緑針葉樹は、樹冠で降雪を遮断し蒸発・昇華させることで、積雪量を減少させるためです。
注1) 豪雪地帯における森林の状態と水流出の関係を明らかにするため、1939年に観測を開始したわが国有数の長期試験地。1961年に試験地を拡大し、現在に至っています(1~4号沢、計8.2ha)
注2) 仮に伐採しなかった場合の融雪流出量を、森林を保全した基準流域(1号沢)の流出量から、伐採前の2・3号沢と1号沢との関係式を用いて推定し、実際の流出量との差を計算しました。
(本研究は、2023年2月に日本森林学会誌において公表されました。)
写真:1970年頃の釜淵森林理水試験地(森林総合研究所 所蔵)
図:融雪流出の増加量と、植栽からの経過年数、年降雪量との関係。
伐採の影響(融雪流出増加)は時間経過とともに小さくなりますが、降雪の多い年ほど大きく現れる傾向もあります。
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