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熱帯の森林減少に必要な対策は、途上国の貧困率を下げる基盤整備

掲載日:2023年2月27日

熱帯林の減少を持続的に防止するためには、途上国の貧困率注1)を低下させる本格的な対策が必須であることが、先行研究や東南アジアでの実証研究を取りまとめた結果、明らかになりました。具体的には、貧困層に向けた総合的な社会基盤(農業・医療・教育支援など)の充実や、彼らの貧困の克服と自立をサポートする対策が重要です。

熱帯林の減少は温室効果ガスの排出源でもあることから、その防止対策が国際的に推進されていますが、期待された成果は得られていません。そこで、世界の先行研究と著者の東南アジアでの実証研究を基に、解明された森林減少の原因を精査し、根本的な解決策を提案しました。

森林減少は、農業地代注2)・貧困率・森林率注3)の全てが高い場合に激しくなると考えられます。(図1)まず直接的な原因は、森林率の高い国・地域の奥地で農業地代が上昇し、その結果として農地転換が進行することであり、なぜ熱帯地域で森林減少が起きたかを説明します。次に根本的な原因として、誰が何のために行うかを分析した結果、農民自身や政府が貧困に対処するために森林を農地転換することが分かりました。実際に貧困率は森林面積の変化に強く影響しており、熱帯林減少の解決には貧困率を低下させることが不可欠と言えます。

現在の対策は、保護地域の拡大など、農業地代を低下させる取組が主流であり、農地転換の進行を抑制するという点で即効性が得られるものの、地域経済を縮小させる影響があることから、持続的に行うことが難しいという課題があります。一方、貧困者の削減は根本的な原因を解決する効果があり、継続性も高いことが過去の研究から実証されています。このように、熱帯の森林減少対策にあたっては、貧困層の削減に向けた対策に主軸を移す抜本的改革が求められています。(図2)

注1) 貧困率:人口に占める貧困層の割合
注2) 農業地代:農地の収益性と同義。経済地理学で定義される地代。
注3) 森林率:土地面積に占める森林面積の割合

本研究は、2023年2月に日本森林学会誌において公表されました。)

図1:森林減少の発生メカニズム

図1:森林減少の発生メカニズム

図2:森林減少対策の抜本的見直しの必要性

図2:森林減少対策の抜本的見直しの必要性。

  • 論文名
    熱帯林減少の原因と解決策 ―貧困削減が森林減少の防止に有効―
  • 著者名(所属)
    宮本 基杖(林業経営・政策研究領域)
  • 掲載誌
    日本森林学会誌、105巻1号、27-43、日本森林学会 2023年2月 DOI:10.4005/jjfs.105.27(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 宇都木 玄
  • 研究担当者
    林業経営・政策研究領域 宮本 基杖

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