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掲載日:2023年4月17日
ティーバッグ法は、市販のティーバッグを土壌中で分解させることによって有機物分解速度を世界中で比較できるように設計された新しい標準手法です(図1)。本研究は、この手法では有機物分解過程を適切に再現できないことを明らかにし、修正法を開発しました。
土壌中有機物は、時間の経過とともに重量が減少し、重量がほぼ変化しない値に収束していく曲線(分解曲線)を描きます。ティーバッグ法は、2種類の茶葉の重量減少率からこの曲線をたった1度のデータ取得によって決定できる画期的手法として提案されましたが、その精度を検証した研究はこれまで皆無でした。
そこで、異なる土壌・環境条件で培養実験を行い、実際のティーバッグ重量の変化データを取得して、ティーバッグ法によって求めた分解曲線と比較してみました。その結果、ティーバッグ法は、特に気温の低い環境では分解過程を適切に再現できないことが明らかになりました(図2)。培養実験から得られた時系列データに指数モデルおよび漸近線モデルを適用したところ、指数モデルはティーバッグ法よりもさらに再現精度が低い一方、漸近線モデルによる分解曲線の再現精度は非常に高いことがわかりました(図2)。そこで、時系列データ5点を取得して漸近線モデルを適用する手法を「ティーバッグ法の修正法」として新たに提案しました。今後はティーバッグ分解の時系列データを取得して正確な分解曲線を取得することが推奨されます。
(本研究は、Ecological Indicatorsにおいて2022年8月に、Ecologiesにおいて2022年11月に公開されました。)
図1:ティーバッグ法の概要
市販のティーバッグ2種類(緑茶、ルイボス茶)を土壌に90日間埋設して分解した量から分解曲線を計算する。
図2:実際のティーバッグ重量の変化データ(白丸)とティーバッグ法(黒線)、指数モデル(灰色線)および漸近線モデル(赤線)を用いて求めたティーバッグ分解曲線の比較
様々な土壌・環境条件での培養実験結果。(a)および(b)は低温環境(気温4℃)での結果。
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