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価格が課題、非住宅木造建築物向けの木質構造部材品

掲載日:2023年8月4日

最近増加しつつある非住宅木造建築物においては、特に3階建て以上の耐火建築物において、構造部材に非汎用*) である大断面の耐火集成材**) が多く利用されており、その価格は一般流通材の2倍以上するなど、住宅で用いられている木質構造部材とは大きく異なることを明らかにしました。

非住宅木造建築物において利用されている木質構造部材の用途や価格に関する特徴を明らかにするため、2019年にそうした建築物を設計・施工している5つの事業体を対象にアンケート調査を行い、実際に建築した19物件に用いた木質構造部材の用途や産地、価格を分析しました。

その結果、2階建てまでの物件では汎用の製材が多く用いられていましたが、3階建て以上の物件では、ほとんどが非汎用の国産材を用いた耐火集成材となっていました(表1)。また、製材や耐火集成材では、国産材が多く用いられていましたが、集成材は外国産材が多くを占めていました。次に、価格を分析したところ、国産材を用いた製材や集成材は外国産材を用いた商品に比べて価格が高いことがわかりました(表2)。それにもかかわらず、製材や耐火集成材で国産材の利用が多かったのは、地域材活用促進のための地域材指定が影響したと考えられました。なお、非汎用の外国産材を用いた集成材も価格が高く、鉄骨やコンクリートに対するコスト競争力が高くありませんでした。今後、非住宅建築物の木造化を国産材で進めるには、汎用の製材と非汎用の集成材の低価格での供給が重要であると考えられました。

*) 非汎用:住宅向けの一般流通材よりもサイズが大きな構造材(ここでは、断面の短辺120mm、長辺240mm、材長6mのいずれかが大きいものとした)

**) 耐火集成材:鉄骨を集成材で被覆する、あるいは、集成材を石膏ボードや難燃材を注入したラミナやLVLで被覆するなどして製造する

本研究は、林業経済において2023年4月に公表されました。)

表1:材種および汎用・非汎用別の利用材積
表1:材種および汎用・非汎用別の利用材積(m3)。
2階以下では製材が多く利用されているが、3階以上では非汎用(太字)の耐火集成材がほとんどとなっている。

 

表2:製材・集成材のサイズ別平均価格

表2:製材・集成材のサイズ別平均価格(長辺で比べた場合)
スギ製材は、長辺が小さいと安いが、大きくなると価格が大きく上昇した。ベイマツの製材は10万円/m3以下と安く、汎用集成材はそれほど高くないものの、非汎用(太字)は製材の2倍前後と高い。

 

  • 論文名
    非住宅木造建築物における木質構造部材の寸法・樹材種および価格に関する分析
  • 著者名(所属)
    久保山 裕史(林業経営・政策研究領域)、柳田 高志(木材加工・特性研究領域)、桃原 郁夫(木材改質研究領域)
  • 掲載誌
    林業経済、76巻1号、1-19、一般財団法人林業経済研究所、2023年4月 DOI:10.19013/rinrin.76.1_1(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 宇都木 玄
  • 研究担当者
    林業経営・政策研究領域 久保山 裕史

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