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森林分野の気候変動緩和策(REDD+)のファイナンスに関する課題を特定

掲載日:2023年10月23日

森林分野の気候変動緩和策*1) であるREDD+*2) のファイナンス*3) とそのガバナンスの課題を、文献レビューを基に明らかにしました。この研究は、現在関心が高まる「自然を基盤とした解決策(NbS)」*4) のためのファイナンスの議論にも示唆を与えます。

REDD+は比較的低コストで気候変動の緩和に貢献し、先進国と途上国の双方に便益をもたらす枠組として期待され、策定されました。そのREDD+の実施で重要な要素がファイナンスです。これまで多くの資金源やメカニズムなどがREDD+関連活動を支援してきましたが、REDD+のファイナンスの包括的な課題や教訓は、十分に分析されていませんでした。

本研究では、国連気候変動枠組条約と条約外のREDD+ファイナンスに関する文献632件を分析し、REDD+のファイナンスとそのガバナンスに関する6つの主要な要素を特定しました(図参照)。条約下でのREDD+ファイナンスは、主に公的ファイナンスを活用したREDD+ファイナンスの成果に関する課題が、条約の外のREDD+関連のファイナンスは、主に民間参画に関する課題があることが明らかになりました(図説明文参照)。

条約と同条約外のREDD+ファイナンスに共通する課題として、温室効果ガス排出量を正味ゼロにする「ネットゼロ」、NbSなどの環境関連目標との連携強化、過去のファイナンスなどの経験を生かせる学習システムの開発などが特定されました。

*1) 気候変動の緩和:温室効果ガス排出量を削減したり、植林などで吸収量を増加したりすること

*2) REDD+:途上国における森林減少・劣化に由来する温室効果ガス排出削減

*3) ファイナンス:資金、金融(本研究では、REDD+を推進するための資金の調達と供給の観点に焦点を置いた)

*4) 自然を基盤とした解決策(NbS):多様な社会的課題を解決しながら、同時に人間の幸福や生物多様性の便益などをもたらす、REDD+を含む幅広い対策

本研究はCarbon Balance and Managementにおいて、2023年5月に公表されました。)

図:文献により明らかになった主要な要素と課題
図:文献により明らかになった主要な要素と課題
条約下でのREDD+ファイナンスは、活動の結果に対して資金が支払われる「結果に基づくファイナンス」や、管轄アプローチといった「国家・サブナショナル枠組」などに関する、主に公的ファイナンスを活用したREDD+ファイナンスの成果に関する課題がありました。
条約外のREDD+関連のファイナンスは、主にプロジェクトレベルを対象とした民間セクターのREDD+ファイナンスへの関与の強化、民間主導の自主的炭素市場や他の投資・資金メカニズムとの関係などの、主に民間参画に関する課題が明らかになりました。

 

  • 論文名
    Challenges and lessons learned for REDD+ finance and its governance.(REDD+ファイナンスとそのガバナンスの課題と教訓)
  • 著者名(所属)
    森田 香菜子(生物多様性・気候変動研究拠点)、松本 健一(東洋大学)
  • 掲載誌
    Carbon Balance and Management、18 (8)、2023年5月 DOI:10.1186/s13021-023-00228-y(外部サイトへリンク)
  • 研究推進責任者
    研究ディレクター 平井 敬三
  • 研究担当者
    生物多様性・気候変動研究拠点 森田 香菜子

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