| 森林総合研究所 所報 | bP1・2002-2 |
| リサーチトピックス | |
| カシノナガキクイムシによる 菌類の伝搬 |
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| 東北支所 生物被害研究グループ 衣浦 晴生 | ||
| 近年本州日本海側を中心に,ミズナラやコナラなどのナラ類が集団的に萎れて枯死する現象が発生している。これらの枯れたナラ類には,例外なくカシノナガキクイムシと呼ばれる甲虫が多量に穿入しており,同時に材からは特定の菌(Raffaelea sp.)が分離される。この菌は,接種実験の結果からミズナラを枯らすことが確認されており,カシノナガキクイムシは,この菌の媒介者ではないかと推察されている。また,カシノナガキクイムシは養菌性キクイムシ類と呼ばれ,アンブロシア菌と総称される共生菌を持ち,自らが胞子貯蔵器官に入れて材内に持ち込んだ共生菌を摂食して生育することが知られている。そこで本菌(Raffaelea sp.)の媒介者であることを明らかにするために,カシノナガキクイムシ成虫の前胸背(雌のみ)にある胞子貯蔵器官や,雌雄の前胃(胃の前にある硬化した器官)から生育段階ごとに菌類を分離した。また蛹が羽化するときの孔道壁からも菌類を分離した。
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その結果,胞子貯蔵器官からは,未成熟成虫期から飛翔成虫期にかけてRaffaelea sp.とYeasts(酵母)類が高い割合で分離されたが,新しい孔道に穿入した後は,両者とも分離率が低下した(図1)。雌の前胃からは未成熟成虫期には何も分離されなかったが,徐々にYeasts類の分離率が上昇した。また飛翔期にはRaffaelea sp.も分離された(図2)。一方,雄の前胃からは飛翔期と幼虫生育期にRaffaelea sp.とYeasts類が分離され,羽化時期における踊室の壁面からもRaffaelea sp.とYeasts類が分離された。これらのことから,雌成虫はRaffaelea sp.とYeasts類を孔道壁面から胞子貯蔵器官に取り込み運搬する,すなわち媒介者であることが明らかになり,共生菌を獲得する時期は羽化直後の未成熟成虫期と考えられた。また胞子貯蔵器官の発見後,消化管を経由した菌類の運搬は重視されなかったが,前胃から菌類が分離されたことで,消化管を通しての伝搬の可能性も示唆された。
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