森林総合研究所 所報 bP1・2002-2
 
リサーチトピックス

下刈り地における植生回復と,
そのコリドー(生物回廊)としての機能
多摩森林科学園 教育的資源研究グループ  林 典子  勝木 俊雄
 
  都市近郊の森林は,数少ない動植物との出会いの場として,レクリエーション,環境教育などに有効に利用することができる。しかし,実際には動植物相は貧弱であることが多く,そうした機能を充分に発揮できる環境は整っていないのが実状である。特に,伐開地や公園などに見られるような,下層植生が刈払われた環境には生息できる動物はほとんどいない。この研究では,多摩森林科学園のサクラ保存林において,植生の回復区域として,下刈りを行わない5m幅のベルト状コリドー(生物回廊)を設け,そこを利用する哺乳類相の変化を調査した。
  コリドー設置後2年経った1998年に,植生調査を行った。先駆性の落葉樹種(クサギ,ニワトコなど)が多く,最大樹高3.6mに成長していた。常緑樹種(アラカシ,ヒサカキなど)も部分的に出現したが、樹高は1.8m以下であった。斜面上部や中部に比べ、下部では木本種は少なかった。
  1999年に,コリドー,下刈り区域及び周囲の天然林の3か所でわなをかけ,小型哺乳類の生息状況を調査した。コリドーでは20個体のアカネズミが捕獲されたが,下刈り区域では全く捕獲されなかった。一方天然林では,アカネズミの他,ヒメネズミやヒミズなど,森林性の種類も捕獲された。また,中型哺乳類の生息状況を調べるために,自動撮影カメラをコリドーに設置したころ,ハクビシンとノウサギが撮影された。しかし,周囲の天然林で生息している森林性の種類(アナグマ,タヌキなど)は,コリドーでは確認されなかった。
  下刈りを止めてから3年間の植生回復ではあるが,比較的開けた環境にも適応する種によるコリドーの利用が確認された。今後,植生の変化に伴って,どのような動物が移動路して利用していくか,継続調査する予定である



写真1. ハクビシン


図1. 調査地の地図


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