所報 No.129 '99-6
[巻頭言]


 行政コストと存在理由

総務部長 加藤了嗣    

 行政改革あるいは行革という言葉が日常の一般用語として定着したのはいつ頃のことであろうか。これらの言葉は日常の生活に必要な言葉として生まれたのではなく,新聞,テレビ等で繰り返し使われているうちに,いつの間にか人人の頭の中に記憶され違和感なく受け入れられるようになったものであり,言葉として定着したのは比較的最近のことではないかと思われる。
 政府が進める行政改革は,逃れば昭和56年3月の第二次臨時行政調査会の発足から始まっている。第二次臨時行政調査会は,昭和50年代半ば,石油ショック後の経済成長率の鈍化等社会経済情勢の大きな変化や巨額の財政赤字の発生尊厳しい財政事情に伴い,高度経済成長期に肥大化した行政を抜本的に見直すため,「社会経済情勢の変化に対応した適正かつ合理的な行政」とは何かを問い直すとともに,その実現のために行政の実態に全般的な検討を加え,行政制度及び行政運営の改善に関する基本的事項を調査審議する機関として発足したものである。その後,臨時行政改革推進審議会,行政改革委員会,行政改革会議での調査審議等と続き,現在までかれこれ20年近くの期間が経過している。
 森林総合研究所は,今次行政改革の目玉の一つとされる独立行政法人化の対象とされた。林業試験場から森林総合研究所に名称を変え,組織機構も社会経済情勢の変化にあわせて再編するなどしてきた経緯はあるが,独立行政法人化は創設以来経験したことのない大改革である。独立行政法人化は,当該組織を国の行政組織から切り離し,企業会計原則などを取り入れて自由裁量の幅を広げる一方,財務内容などの公表を義務づけ,外部の評価委員会が業績評価を行うことにより低コストで効率的な行政サービスを実現しようとするものである。縛りを緩くする代わりに結果を厳しくチェックするということであり,これまでは,事業の実施に先立って必要性を明らかにするとともにどのような手段でどのような成果を期待するかが評価の中心であったが,これからは,事業実施後にあらかじめ設定した目標と比べて実際の結果がどうであったかを評価し,その後の業務の継続,組織のあり方等に反映する仕組みに変わる。
 今後,森林総合研究所はどのように対処していくべきか。客観的な評価をきちんと実施することができるかどうかについては評価手法の問題など難しさもあるが,評価される側としては,まずは独立行政法人評価委員会の評価に耐えうる成果を上げることが必要である。もう一つ忘れてならないことは,森林総合研究所の存在理由を十分に説明することである。関係行政機関,大学,団体等から依頼を受けたり,委嘱を受けたりして行っている業務も含めて,国民及び社会にとって重要な課題があり,その課題解決のためには森林総合研究所での試験研究活動が必要であるということをよく理解してもらわなければならない。行政のスリム化が求められている中にあっては,事業実施の資格が認められることと同時に,事業自体の必要性が認められなければならない。コスト意識を持つこと,存在理由を問い続けることが,これからますます重要になってくる。


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