森林総合研究所 所報 bR3・2003-12
 
「森林の多面的機能」
解説シリーズ

第16回 防風・防潮・飛砂防止機能
気象環境研究領域    坂本 知己
 
  防風・防潮・飛砂防止機能は、数ある森林の防災機能の中でもとりわけ実感されやすいものです。なお、対象となる樹林地が、多くの場合、帯状に広がっていることと、森林と呼ぶほどの広がりがないこととから、ここでは林帯と呼びます。

防風機能

  防風機能は文字通り風を防ぐ機能です。農村地帯では、強風から農作物を守るための耕地防風林や、同じく人々の暮らしを守るために家屋・敷地を囲むように屋敷林が仕立てられてきました。林帯は日陰を作り、また、耕作できる土地を減らしますが、冷害の年やまれにみる強風が吹いたときに、林帯がある場所と林帯がない場所とでは農作物の被害の出方に大きな差が生じます。
  防風機能は、林帯を構成する木々の密度や樹高の影響を受けます。林帯幅が狭く木々がまばらの場合、風が吹き抜けて防風効果は高くありません。逆に混みすぎていると林帯直後の風速は大きく低下するのですが、その後方で風速が回復しやすく効果範囲が狭くなります。樹高は高いほど、日陰を作ることになりますが、防風範囲は広がります。
  なお、海岸地帯のような樹木にとって環境が厳しい場所では樹高成長が抑えられます。そのような場所では、林帯幅を広くすることで樹高を高くすることができます。海側の樹木が衝立のような役割をすることでその背後の環境条件が少し良くなり、内陸ほど高い樹高を期待できるからです。

防潮機能
  防潮機能は、津波、高潮の被害を減らす機能です。林帯には、高波が林帯を通過するときにそのエネルギーを低下させ破壊力を弱めることや、海水とともに流れ込んでくる漁船などの様々な漂流物を林内に留めることで、それらが家屋などへ衝突することによる被害を減らす働きがあります。また波が引くときに車両や家屋、家財道具など、ときには人が海上へ流されることを防ぐ働きも期待されています。高潮は、津波とは違った現象ですが、高波ということで林帯はほぼ同じように機能すると考えられています。
  防潮林は、その働き方から、広いほどよいということになりますが、たとえ狭くても、林帯があるのとないのとでは大違いであることをこれまでの事例が示しています。また、林内に中低木を生育させることがより効果的とされています。
飛砂防止機能
  飛砂防止機能は、砂浜から吹き寄せる砂が内陸の家屋や田畑へ及ぶことを未然に防ぐ機能です。林帯のこの機能は絶大で、林帯がなければ家屋、田畑は砂に埋まり、頻繁に砂を運び出さなければそれらを放棄することになります。
  林帯は、砂浜から移動してきた砂を止めますが、それには限界があります。というのは、林帯は風速を弱めて吹き寄せてきた砂を止めますが、飛砂が多い場所では、林縁部で止まった砂は徐々に積もり、しまいには樹木を埋めるからです(写真)。これが続けば、林帯は砂地に飲み込まれていきます。激しい飛砂をくい止めるためには、堆砂垣や砂草地帯(砂地に適応した草本が分布する地帯)と組み合わせた対応が必要で、さもなければ定期的な排砂作業が欠かせません。すなわち飛砂防止機能として重要なのは、移動してきた砂を止めることよりも、樹木で砂地を覆うことで飛砂の発生源を消していることです。この点で、発生後の現象に対応することを目的とした防風・防潮機能とは異なります。







押し寄せた砂に埋まるクロマツ林




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