森林総合研究所 所報 bR5・2004-2
 
巻頭言

木質バイオマスガス化発電の発展性
研究管理官  海老原 徹 

  平成14年末に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」などを背景に、木質バイオマスの利用促進に向けて各地で動きが見られる。秋田県能代市には、スギ樹皮や製材端材などを年54千トン使用し、毎時3000kWの電気と24tの蒸気を生産する大型の発電施設が昨年2月に稼働しているが、ここでは小規模ながら夢のある事業を追い求めている岩手県衣川村の事例を紹介したい。木質バイオマスのエネルギー利用は、地球温暖化防止や森林整備の充実、さらには山村での雇用促進・山村振興など幅広いメリットがあるが、村ではまさにこの実現を目指している。
  村では温泉施設にガス化炉を設置し、ガスエンジンにより20kWを発電し、施設の電気と熱をまかなうことにしており、これが軌道に乗れば全村的に導入する構想で、村内の間伐材などを利用したときの採算性も検討されている。
  ここでユニークな点は、発電と同時に次世代エネルギーの水素燃料や炭素系新素材カーボンナノチューブの製造を指向する点にある。
  木材のガス化ではタール分の発生と除去がネックとなっているが、このプラントはタールを除去するために水蒸気改質を行っている。このため、従来のガス化炉に比べてはるかに水素リッチのガスが生産できることが分かっている。従って燃料電池の燃料として今後の需要が期待され、ガス化により燃料電池での発電も可能となる。
  もう一つ木質バイオマスのガス化技術にとって明るい可能性を期待させるのが、炭化水素ガスからカーボンナノチューブを生産するというものである。カーボンナノチューブはエレクトロニクスや複合材料など幅広い分野で応用が期待されている素材で、全世界がその量産技術を巡って開発を争っている。このカーボンナノチューブが、現在研究が進められている触媒化学的気相成長法という技術を用いて、木材をガス化したガスから生産することができそうである。
  木質バイオマスから水素とカーボンナノチューブの生産が実現すると、山村を活性化することができる他に、化石資源の節約とともに樹木が光合成で空気中の二酸化炭素を固定したものをそのまま炭素材料として固定できることになり、地球温暖化防止に寄与できる。
  このシステムを実現するには、超えなければならない技術的ハードルが多くあると思うが、早期にこの木質バイオマスのガス化システムが完成することが期待される。森林総研としても共同研究等により最適ガス化条件、廃熱利用技術等の開発に取り組む予定である。

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