森林総合研究所 所報 bS1・2004-8
 
巻頭言

長期的・総合的視点を踏まえた森林研究を!
東北支所長  中島 清 

  平成13年4月に国立試験研究機関等が独立行政法人化されて3年が経過した。各独立行政法人には「公共性」、「自主性」、「透明性」の確保とともに「業務の効率化」が強く求められている。
  折しも同年9月、わが国で初めて「牛海綿状脳症」(BSE)が確認され、国内に大きな衝撃が走った。さらに今年1月、高病原性鳥インフルエンザウイルスが79年ぶりに確認され、京都では鶏の大量死を報告しなかった養鶏場経営者が逮捕された。BSEの場合、畜産リサイクルの一環として与えられた飼料の骨肉粉が感染源として強く疑われている。一方、鳥インフルエンザの感染では大規模な飼育をする際に必要なリスク管理に甘さがあったと指摘する声がある。その後の結果の重大性からして、リスク管理に対する「長期的視点」が欠けていたことは否めない。
  森林ではどうか?FAOの報告書「世界の森林事情2000」によれば、森林面積は熱帯途上国を中心に依然として減少している。森林伐採後の土壌浸食や洪水による災害の多発、荒廃地の拡大は想像を絶するところがあり、森林回復には木材伐採で得られる収益の何倍もの経費と労力を必要とし、大規模で無秩序な森林伐採は決して経済的、効率的とはいえない。
  ではなぜ、同じような失敗を繰り返さねばならないのだろうか。そこには長期的視点を欠いた「経済効率」のみを優先する経営論理が見える。経済のグローバル化に伴う熾烈な競争社会では、必要なリスク管理までが効率化の名の下に「無駄」とみなされる危険がある。
  森林が持つ多様な機能の中でも、近年は特に環境保全機能に対する関心や期待が高まっている。森林がこれら機能を発揮するためには、適切に保全・管理される必要がある。森林は成林するまでに長年月を要するにもかかわらず、森林を破壊し、荒廃させるにはわずかな時間で十分である。それ故に森林の適切な管理は長期的な視点とともに影響評価等を含む総合的な視点も必要である。
  1992年の地球サミット以降、持続可能な森林管理への関心が世界的に高まってきたことは歓迎すべきことである。しかし、森林は単に保全すれば良いものではない。森林は利用と保全を同時に図る必要があり、それには長期的な視点と総合的な視点が不可欠である。
  「国家百年の計」という言葉があるが、森林総研は来年11月にちょうど創立百周年を迎える。101年目に当たる平成18年は次期中期計画の初年度となるスタートの年であり、次なる百年の礎となる記念すべき重要な年でもある。この機会に、短期的な視点に囚われることなく、長期的視点・総合的視点を踏まえた国家百年の計にふさわしい森林研究のあり方の議論が全所的に進むことを心から願う次第である。

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