森林総合研究所 所報 bV6・2007-7
 
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研究プロジェクト
台風撹乱を受けた落葉広葉樹林の撹乱前後のタワーフラックスの変化とCO
2収支の解明」の紹介
北海道支所 CO2収支担当チーム長  宇都木 玄
 
  現在、地球上のおよそ200カ所におよぶ森林生態系で、大気−森林間のCO2フラックス(タワーフラックス)観測を中心にしたCO2収支の研究が行われています。しかし、これらの観測のほとんどが、林分構造が安定した天然林もしくは人工林を対象としており、森林の撹乱にともなうCO2収支の変化を詳細に比較した例は、人為的な伐採実験を除いてありませんでした。
  一方、森林の構造と動態に及ぼす自然撹乱の影響の重要性が世界各地で認識されてきましたが、アジアモンスーン下にある日本では、台風による自然撹乱がもっとも普遍的なものといえます。さらに、地球温暖化にともなう台風の大型化が予想されており、森林生態系のCO2収支を評価するうえで台風撹乱の影響は無視できないものと考えられます。
  これまで森林生態系のCO2収支に及ぼす撹乱の影響は、隣接する森林と皆伐地でタワーフラックスの比較などが行われていましたが、皆伐であることや伐採木が持ち出されるなど自然撹乱と条件が大きく異なっていました。一方、自然撹乱については、遷移段階の異なる林分で純生産量等の比較が行われているにとどまり、森林の撹乱から回復に至る過程での、光合成や呼吸・分解の炭素循環プロセス、その総和としてのCO2収支やタワーフラックスの変化については、未解明のままでした。
  森林総合研究所北海道支所では、羊ヶ丘実験林(落葉広葉樹林)で、2001年よりタワーフラックスと樹木−土壌系の炭素循環プロセスを明らかにしてきました。このサイトは、2004年9月の18号台風で大きな風倒被害を受けましたが、2005年春にはタワーを再建し、同年7月から台風撹乱後のタワーフラックスおよび個別プロセスの観測を始めています。このような背景の下、本研究は、文部科学省科学研究補助助成金(H19−23)を受けて本年度からスタートしました。
  ここでは、以下の3つの研究をおこないます。
(1)撹乱後の葉量変化から林冠光合成速度の面的な分布を推定し、タワーフラックス観測のソースエリア、(観測さてれいる場所の位置と大きさ)を解析します。
(2)撹乱にともなう植物体呼吸・分解呼吸(土壌及び枯死植物)の変化を明らかにします。
(3)上記の結果をもとに、炭素循環モデルに撹乱のプロセスを導入し、強度の異なる台風撹乱が森林のCO2収支に与える影響をシミュレーションします。
  本研究から得られる知見は、地球の陸域生態系モデルヘの撹乱プロセスの導入に役立つとともに、IPCC第5次報告に貢献することが期待されます。                
 
写真1






写真1 撹乱前(左図)と撹乱後(右図)の林冠の赤外カラー写真。
白く見える部分が台風によって失われた。黄色い扇方の中が生育期間中の風向、黒線は林道である。


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