森林総合研究所 所報 bV8・2007-9
 
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研究プロジェクト
地域材を活用した保存処理合板の開発」の紹介
複合材料研究領域 積層接着研究室長   井上 明生
 
1.背景と必要性
  木造住宅の長寿命化は、家を建てる個々の人にとって極めて重要なポイントであるばかりでなく、二酸化炭素の長期固定、さらには温暖化対策といった地球規模の課題としても重要となっています。木造住宅の耐震性は、筋交い等を用いた耐力壁の量や配置により決まりますが、最近では、ツーバイフォー(枠組壁工法)住宅のみならず在来軸組工法の住宅においても、筋交いの代わりに構造用合板を用いた耐力壁が多く使われるようになってきました。したがって、長寿命木造住宅を実現するためには、土台や柱といった軸材料に加えて合板の高耐久化が必要となります。
  国土交通省の「住宅の性能表示制度」の中には、「劣化の軽減に関すること」という項目があります。この基準では、構造躯体が3世代(75〜90年)にわたって長期間使用できる程度の対策が施行されているもの(等級3)においては特別な場合を除き、地盤から高さ1m以内の部分の合板について、防腐・防蟻処理をしなければならないことが定められています。しかし、現在、構造用合板の日本農林規格(JAS規格)には、防虫合板の規定はありますが、防腐・防蟻合板に関する規定が定められていません。
  そこで、保存処理合板(防腐・防蟻合板)をJAS規格に位置付けるために必要なデータを整備することを目的として、本年度から3カ年の計画で本プロジェクトを開始いたしました。本研究プロジェクトには、北海道立林産試験場ならびに京都大学生存圏研究所が参画しています。
2.研究内容
  主な合板の保存処理法としては、(1)合板の構成要素である単板を薬剤処理してから、保存処理合板を製造するもの(単板処理)、(2)接着剤に薬剤を混入して、単板を接着し、保存処理合板とするもの(接着剤混入)、および(3)製造された合板を薬剤処理するもの(合板処理)があります。保存処理合板を国家規格であるJAS規格に位置付けるためには、それぞれの処理法ごとに、接着性能に悪影響を及ぼさないこと、薬剤が木材(単板)にきちんと入っていること、十分な防腐・防蟻性能を有することなどについて明らかにしていく必要があります。また、保存処理合板中の薬剤検出に適した新たな分析法を開発するとともに、シックハウスで問題となる揮発性有機化合物(VOC)の放散特性についても明らかにしていく予定です。

3.成果の活用
  JAS規格は法律(農林物資規格法)により5年ごとに見直しされることとなっており、独立行政法人・農林水産消費安全技術センターにおいて「合板のJAS規格見直し委員会」が組織され、JAS規格改正原案の検討が行われます。森林総合研究所からも本プロジェクト担当者が同委員会の委員として参画し、本研究成果を積極的に同委員会に提供していき、保存処理合板のJAS規格化を図ります。
  保存処理合板のJAS規格が制定されることにより、これまで依拠すべき規格・基準がないために保存処理合板の使用に二の足を踏んでいた各住宅メーカーが保存処理合板の積極的な導入を図ると考えられることから、平成15年の製造実績50,000m3が平成25年にはその3倍程度にまで増大すると予想されます。合板用原木としては、従来のラワン材(南洋材)から針葉樹材の需要が増加していることから、スギ等地域材の需要拡大にも大きく貢献することが期待できます。
 
保存処理合板の種類と解明すべき点
保存処理合板の種類と解明すべき点

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