森林総合研究所 所報 bV9・2007-10
 
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研究プロジェクト「広葉樹林化のための更新予測および誘導技術の開発」の紹介
森林植生研究領域長    田内 裕之
 
  日本の森林は、約1000万haが人工林化されていますが、人工林に対しても国土保全、水源のかん養、生物多様性の保全など森林の持つ公益的機能のさらなる発揮が期待されています。また、新たな森林・林業基本計画では、人工林を広葉樹林化や長伐期化するなどして、多様な森林を育成していくことが掲げられています。一方、森林整備に関する税(森林環境税等)が多くの都道府県で導入・検討され、公益的機能の向上のための施業が推進され始めました。
  しかし、人工林を以前にあった天然林、つまり広葉樹が主に成育するような広葉樹林へと誘導(更新)する技術は今までありませんでした。そこで本研究では以下のような技術を開発することを目標としています。

1)更新予測技術の開発
  対象となる人工林を自然更新を利用して広葉樹林へ誘導することが可能か、そのためにはどれくらいの時間がかかるのか等の更新を予測する技術を開発し、広葉樹林化への適地判断や更新リスク等の判断基準を作成します。
2)誘導化施業オプションの高度化
  自然のままでは更新を期待できない場合、種子を散布する動物を活用して広葉樹の種子を人工林内へ持ち込ませる方法、広葉樹の芽生えをより早く成長させるための上木(植栽木)の伐採方法等の天然更新促進技術を開発します。また、植栽する場合はどのような苗木を植栽すればよいのか、その苗木はどの地域のものを使うべきか等、菌根を感染させた苗を利用した新たな更新手法の開発や遺伝子資源の保全を図るための種子源確保および育苗システムの構築を行います。さらに、人工林から広葉樹林へと誘導する過程における林床の植生、表土の流出量、流域水量等の変化を測定し、広葉樹林化における公益的機能変化を評価します。

3)施業モデルの開発
  今までの天然林施業では、更新結果が検証されなかったために、更新完了とされた林分が10〜20年後に当初目標とした林型になっていない事例があることが明らかになってきました。そこで、更新検証システムを開発し、誘導化が予測と違った場合に軌道修正が行えるような、検証−誘導化技術改善体系を構築します。最終的には、様々な施業オプションから、省力的で環境負荷を低減した誘導施業を示し、経営者や管理者が、対象とする人工林に対して施業モデルの中から現実的かつ可能性の高い施業を選択し、誘導化が確実に行えるような施業モデル作りを目指します。

図
図 広葉樹林化を目指す場合、天然更新の可能性を予測し、
必要な施業を提示し、その結果を検証するシステムを構築します。


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