森林総合研究所 所報 bW1・2007-12
 
巻頭言

林木育種事業50周年を迎えて
林木育種センター育種部長    宮田 増男

宮田 林木育種センター育種部長  我が国においては、戦後の林業生産力の増強が要請される中で、1957年に国立の林木育種場の設置が開始されるなど、林木育種事業が組織的に開始され、半世紀が経過しました。先月の11月5日に、「美しい森林(もり)づくりと林木育種の新たな展開」をテーマにして森林総合研究所主催の林木育種事業50周年記念シンポジウムが、東京大学弥生講堂において開催されました。林木育種に直接携わっておられる方々や関心をもっておられる方々300名が結集し、講堂が満杯となりました。林木育種を推進、支援していただいている方々のエネルギーを感じました。
  ところで、林木育種事業は、森林総合研究所、都道府県、森林管理局などが連携し、時代の要請に対応しつつ推進され、森林の多面的機能の発揮に貢献してきています。最初の事業である「精英樹選抜育種事業」は、成長量の増大と幹の通直性の改良を主目的として開始され、その後、拡大造林の進展に伴って気象害抵抗性育種事業が、松食い虫被害の増大に対応してマツノザイセンチュウ抵抗性育種事業が順次開始されました。また、「量から質へ」ということで、1980年からは、ねじれの少ないカラマツを選抜するためのカラマツ材質育種事業が、1992年からはスギを中心とした材質育種事業が、1995年からはケヤキ等の広葉樹育種が、それぞれ開始されました。さらには、1990年代後半から、環境問題への対応として、花粉症対策に有効な品種の開発や地球温暖化防止に有効なCO
2吸収・固定能力の高い品種の開発を行うためのプロジェクトが開始されました。他方、1985年以降、林木育種にバイオテクノロジーを活用するため、順次、組織培養技術、DNA技術や遺伝子組換え技術の実用化プロジェクトが開始されました。
  現在までに、精英樹の検定が進み、この中から成長の優れた品種、材質の優れた品種、花粉の少ないスギやヒノキ品種などが開発されています。また、マツノザイセンチュウ抵抗性のクロマツ、アカマツ品種、スギカミキリやスギザイノタマバエの抵抗性品種、雪害抵抗性品種なども開発され、活用されています。CO
2吸収・固定能力の優れたスギやトドマツ品種がまもなく開発される予定であり、さらに、現在の精英樹よりも一段と優良な第二世代精英樹の開発や現在のマツノザイセンチュウ抵抗性品種よりも一般と抵抗性の優れた第二世代マツノザイセンチュウ抵抗性品種の開発も進められています。
  林木育種は、昨年、林野庁により策定された「林木育種戦略」において、「広義には森林において林木を遺伝的に管理すること」と明記されています。林木育種は、優良な品種を開発することのみではなく、新植や択抜、間伐、病虫害等の被害防除などの森林施業や種苗の流通などとも連動させて推進する必要があります。今後、さらに、それぞれの地域の施業に密着した品種の開発、普及に迫る必要があり、林業の活性化、国民が安心して暮らせる環境創りへ、林木育種はより一層進度を速め応えていくことが重要と考えています。

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