森林総合研究所 所報 bW2・2008-1
 
巻頭言

新年を迎えて
理事長    鈴木 和夫

鈴木 理事長  新年明けましておめでとうございます。
  今から30年前に林業試験場本場は筑波研究学園都市へ移転し、20年前に森林総合研究所へと改組して、7年前に独立行政法人となりました。いずれもつい最近の事のようでもあり、遥か以前だったような気もします。この間、すっかり社会の森林を見る目は変わりました。100年前に国家の財政に関する官房学であった林学は、現在、森林の価値の評価という、新しい森林科学体系を模索しています。森林科学の最大の特徴である、俯瞰的、時空の超越、多面的な機能、という3つのキーワードは、考えてみるといずれも同じカテゴリーを指向しているように思えます。だからこそ、いままで国家的戦略として取り組まれてきたものでした。
  昨年7月、森林総合研究所で開催された吉川弘之産業技術総合研究所理事長の「研究開発型独立行政法人を語る」の講演は印象的でした。「最近はイノベーションがよく言われている。私たちを取りまく世界が行き詰まりを迎えて、イノベーションとは新たな価値が生まれ社会が豊かになることを意味している。そして、これを解決する方向に独立行政法人も舵を切らなければならない。」で始まるその内容は、明快で、ともに噛み締める価値があります。
  今までの百年に及ぶ森林に関する試験研究の蓄積は地に足の着いたものであり、まさにscience for societyのlocal knowledgeです。英語のlocalは、ruralやregionalとは異なり、本格的な知識を意味します。これは吉川氏の語る悪夢からの脱却を図る本格研究にも通じるところがあるように思えます。
  モントリオールプロセスで合意された持続的な森林の管理は、森林の価値の量から質への転換を図るものです。わが国では、まずは1千万haの人工林をどのように取り扱うのか喫緊の課題です。そして、目に見える機能よりも目に見えない機能の方がずうっと重要であることの質的価値の具現化も必要です。ものからこころ(ひと)へ時代の趨勢は、美しい森林づくりと同時に、知の世紀における森林・林業・木材産業の取り組み方が求められています。
  今年は筑波移転30年の而立の年にあたり、皆様にとってThink globally,act locallyの充実した年であることを願います。


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