森林総合研究所 所報 bW3・2008-2
 
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研究プロジェクト
「菌床シイタケ害虫ナガマドキノコバエの環境保全型防除技術の開発」の紹介
企画部上席研究員    北島 博
 
  シイタケは、煮て良し、焼いて良し、だしも絶品と、日本人の食卓には欠かせないきのこの一つです。また、特用林産物としても重要で、平成18年度の我が国におけるシイタケの生産額879億円は、きのこ類の総生産額2,366億円の約37%を占めています。名前のとおりシイの木などに生えるので、丸太にシイタケ菌を植え付けて栽培することが出来ます。一方、おが粉に水や米ぬかなどを混ぜてブロック状に固めた菌床(きんしょう)にシイタケ菌を植え付けて栽培する方法もあります。栽培舎内に設置した棚の上に2kg前後の菌床を並べて、発生してくるシイタケを収穫します。菌床は取り扱いが容易であるので、栽培の省力化に大きく貢献しています。このため、現在ではシイタケ生産量の約7割が菌床によるものになっています。
  ところが、菌床シイタケ栽培の普及につれて、栽培舎内にナガマドキノコバエが大発生するようになり、現在では北海道から宮崎県にいたる全国各地で問題になっています。幼虫が菌床やシイタケを食べることで、生産量や出荷量が減ってしまいます。その上、出荷したシイタケに幼虫が混入して流通してしまったら大変です。消費者のクレームを受けるだけでなく、出荷停止という罰まで受けてしまいます。このため、生産者の方々は収穫したシイタケに幼虫が混入しないように、出荷前に行う選別作業に多大な時間を費やさなければなりません。
  そこで、森林総合研究所は、農林水産技術会議の先端技術を活用した農林水産研究高度化事業の委託を受け、「菌床シイタケ害虫ナガマドキノコバエの環境保全型防除技術の開発」を行っています。公立林業関係研究機関および民間企業と共同し、平成19年〜21年度の3年間で、ナガマドキノコバエによる被害を減らす技術を開発することが目的です。防除にあたっては、きのこ類のもつ「自然食品」、「健康食品」のイメージを損なわず、食の安全・安心に配慮するためにも、農薬を用いない方法が必要です。本研究では、成虫誘殺器の開発とそれによる大量捕殺で被害を軽減する方法を目指します。
  成虫は特定の波長の光や、ある種の匂いに誘引されますが、両者を効果的に組み合わせて、より強力な誘引カを生み出す手法を検討します。「光」には発光ダイオード(LED)を用いることで、省エネルギー、防水、および維持管理の低コスト化をはかります。また、集まってきた成虫を効果的に捕殺する粘着剤を開発します。これらの「光」、「匂い」、および「粘着剤」を組み合わせて、強力な成虫誘殺器を開発していきます。一方では、栽培舎内でのナガマドキノコバエの発生消長や生態調査を行い、適切な誘殺器の設置数、設置場所、設置時期などを解明することで、誘殺器の生産現場への普及促進をはかりたいと考えています。
  食の安全・安心には高い関心が向けられていますが、虫の付かない食材を求める傾向は収まりそうもありません。このため、シイタケ生産者の方々は多くの労力をナガマドキノコバエの被害予防に注いでいます。生産者の苦労を軽減する技術を開発し、安全・安心なシイタケが消費者に届くようになることが、本研究の務めであると考えています。
図 菌床シイタケ害虫ナガマドキノコバエの環境保全型防除技術の開発
図 菌床シイタケ害虫ナガマドキノコバエの環境保全型防除技術の開発
−背景および研究内容−

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