森林総合研究所 所報 bW4・2008-3
 
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平成 19年度地球科学技術理解増進活動推進事業機関活動支援
「古都の里山健康調査−千年の森と文化を守るには−」の実施の紹介

 
  関西支所では、独立行政法人科学技術振興機構(JST)が、平成 19年度から開始した「地域の科学舎推進事業」の「機関活動支援」に応募し、平成19年10月から20年 3月の半年間の助成を受け活動を行っている。今後の参考のために、活動の概要を紹介する。
  本事業では、科学館・科学系博物館、大学・研究機関、自治体、各種団体、個人ボランティア等が地域の児童生徒や住民を対象に、身近な場で実施する体験型・対話型の科学技術理解増進活動を支援するものである。
  関西支所では、「古都の里山健康調査−千年の森と文化を守るには−」をテーマに、里山林 の理解、森林の視察手法や健康調査法などを体験しながら学び、森林とのつきあい方を実践的に伝授することを目標とした。対象者は小学生(高学年)、中学生、保護者の大人などで、森林に関する写真や説明パネル、標本で学習し、映像や顕微鏡なども使って、理解を深める活動を計画した。これらの活動内容は、関西支所が従来行っている内容を基本とした。半年の間に、3回のイベント(小学校での出前授業、関西支所での講演実習、および子供たちの発表会)を計画した。
  第1回目(11月)は京都市立岩倉北小学校及び学校林において、「マツ枯れのナゾにせまる」と題して、枯死木の伐採、剥皮、マツノマダラカミキリの幼虫採集、マツノザイセンチュウの観察などの活動を実施した。当日は子供 (小学生 5、6年生中心)22名と保護者、教員あわせて13名が参加し、関西支所からは 3名が指導にあたった。木の伐採作業は子供にとって非常にインパクトが強く、好奇心を強く刺激されるようで、活動を盛り上げることになった。丸太の鋸引きは大人が行う予定であったが、積極的に自分で鋸を使う児童が続出したのは予想外であった。怪我がないように目配りしたが、小さな切り傷が 1件のみで、非常な集中力で没頭していたのが印象的であった。長時間 (午前 9時開始〜午後 5時過ぎ終了)の活動となったが、顕微鏡による観察とデジカメによる幼虫の撮影には最後まで行列ができた。山で枯れている樹木(大半はマツ)には世の中の大半の大人は気がつかないか無関心であるが、この活動に参加した方々は、今後森林を見る目が変わることは確実である。このような体験型の情報伝達は、座学より効果があるので、今後も積極的に行いたい。なお、性能の良い顕微鏡の貸与は学校から非常に感謝された。
  第2回目(12月)は、成人を対象に、関西支所の標本展示・学習館において、京都の里山林が江戸時代からの歴史的な成り立ちの背景を含めて、どのような林であるのか解説した。近年増加しつつあるナラ類の集団枯死やマツ枯れの発生メカニズムなどに関して授業を行った。参加者は京都の山岳会所属ということもあって森林の変化に対する興味が非常に強く、質問が多数出た。
  今回の助成額は100万円ほどで、使途としては、実習や観察用具として、顕微鏡類、デジタルカメラ、ノコギリや剪定ばさみ、野帳、図鑑類や書籍、デシタル図鑑類 (DVD)などを調達した。これらの用具や図鑑・図書類の充実は、体験活動に大いに役立ち、参加者に喜ばれている。
  問題点としては、今回の応募が二次募集(後期)のために半年という短期間で事業を達成する必要があり、JSTの制度や詳細な実施マニュアルを埋解するのに時間を要し、さらに対応先の行政機関(市役所、教育委員会)やNPO法人との 日程調整、物品などの調達、活動に伴う保険加入など、通常業務に存在しない事態に対応せざるを得ない点などがあげられる。
  とはいえ、参加者からの反響やアンケート結果では、「非常におもしろかった」、「今後も同様の催しに参加したい」という答えが大半を占めており、望まれていた情報を提供できたと考えられる。この支援活動は、当支所の紹介や研究成果の広報に寄与し、さらに地域の児童生徒や住民を対象とした科学技術に関する体験型の学習活動を一層推進させると期待される。
  なお、実施体制は、
実施主担当者:山田文雄、
実施副担当者:黒田慶子、
連携機関名:京都おやじの会連絡会(事務局は京都市教育委員会内)
である。
第1回イベントの様子
第1回イベントの様子
第2回イベントの様子
第2回イベントの様子

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