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更新日:2022年3月16日
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紫色の花をつけるホトケノザ
青空を仰ぎ見るホトケノザの花
ホトケノザ(シソ科)
Lamiumamplexicaule
ホトケノザは3月から5月頃に紫色の花をつける草丈10~20cmくらいの草本です。葉の形が仏様の台座のように見えることからこの名で呼ばれます。早春、桜の花が咲く少し前に花が咲き始めます。明るい場所を好み、道端や田畑の畦などによく生えていて、里山の林縁などにも生育しています。茎の上部の葉脇に長さ2cm程度の唇形状の花をつけますが、上側の花弁は覆い被さるような形で短毛が生えていて、下側の花弁は二つに分かれ濃赤色の斑点があります。
本種はアジアからヨーロッパ、北アフリカにかけて広く分布し、日本では本州、四国、九州、南西諸島で見られますが、有史以前に農耕の伝来とともに移入された古い帰化植物ではないかと考えられています。
ホトケノザの花には普通に開花する開放花と開花しない閉鎖花があります。開放花は花粉が昆虫に運ばれて結実し、閉鎖花はつぼみの中で自家受粉します。開放花は他の個体の花粉を受粉して遺伝的な多様性をもたらし、閉鎖花は昆虫が訪れなくても確実に種子を残すという、二通りの生存戦略を併存させています。種子にはエライオソームと呼ばれる白い物質が付着していますが、これはアリが好んで餌として、種子を運んで地中の巣に持ち帰るため、アリによって種子が散布される「アリ散布植物」の一種です。
なお、春の七草として詠まれている「ほとけのざ」は本種ではなく、キク科のコオニタビラコのことを指すといわれています。
2022年3月15日高知県高知市森林総合研究所四国支所にて撮影
(写真と文:佐藤重穂)
本記事公開日:2022年3月15日
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