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更新日:2010年6月1日

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自然探訪2007年9月 サワラ

サワラ(Chamaecyparis prisifera (Sieb. Et Zucc.) Endl.)

サワラは不思議な木である。同属のヒノキ(C. obtusa)に比べ、強靭さに欠け構造材としての材質はかなり劣るとされながらも、一方、樽や桶材として古くから広範に利用されてきた。ヒノキは城や御所、神社仏閣の構造材、仏像の素材に使われ、いわば神聖・財力・権力を象徴し、支える樹木であるのに対し、サワラは庶民の日常生活を支える樹木である。サワラの天然分布は岩手県以南の本州、四国、九州に分布し、主に谷壁斜面の下部、岩石地に生育し、好んで巨岩の上や倒木上に更新するように見える(写真1)。大きなものでは直径1m以上、樹高30m以上になるといわれるが、心材が腐れ易いなどからヒノキほど長寿命ではないようである(写真2)。

ところで、長野県松川村の有明岳の山麓部には、奇妙な樹形のサワラの集団がある。直径2~3mの幹が地上3~4mの場所で枝分かれし、さらにその上部2mほどで更に枝分かれをするといったサワラの個体が多数見られる(写真3)。これは一見すると北山の“台スギ”のサワラ版で、“台サワラ”とも呼ぶべきものである。言うまでもなく、台スギは、スギを地際2~3mで人為的に伐採し、立ち上がった数本の側枝を主幹として育成し、その幹を小丸太として利用する育林法であるが、台サワラも同様の利用法から生み出されたものと思われる。一般に、こうした樹型、利用法はPollardと呼ばれ、世界各地に見られる。日本で代表的なものがブナの“あがりこ”で、薪炭材生産の結果、生み出されたものといわれている。この場合、台伐り位置は、冬季伐採するところから、雪積深が影響するとされている。しかし、台サワラは、台スギやブナのあがりことは異なり、台伐り位置が上へ上へと登っていく。この原因の一つに、サワラは不定芽が出にくく、結果、側枝が主幹として立ち上がり、枝を伸ばした上で、伐採、利用を繰り返したためと考えられる。こうしたサワラの生態的特性を利用した木材生産が、いつ、誰によって、何を目的に行われてきたのか今や知るすべもなく、歴史に埋もれ、不思議な樹形をかの地に残すのみである。

サワラ写真1
写真1


サワラ写真2
写真2


サワラ写真3
写真3

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