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更新日:2010年6月1日

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自然探訪2008年10月 クマシデ

クマシデ(Carpinus japonica Bl.)

秋になると多くの樹木は果実や種子をつけるが、その形状や色合いはそれぞれ異なり面白い。今回紹介するクマシデ(写真1)は、カバノキ科のクマシデ属に属する落葉高木で、本州、四国、九州に分布する日本固有種、山地帯の沢沿いを中心に生育する。クマシデ属の樹木果穂(果序)は、ビールの芳香薬味剤に使うホップ(クワ科カラハナソウ属のRumulus lupulus)の実のように房状になる。世界では、クマシデ属が北半球の温帯地域に約40種分布し、本邦には、クマシデを始め、アカシデ、イヌシデ、サワシバ、イワシデのクマシデ属5種が分布する。いずれも、その果穂は房状でホップに似る。しかし、アカシデ、イヌシデは、果苞(総苞)が開き、個々の種子が見える(写真2、イヌシデ)のに対し、クマシデ、サワシバは果苞が蓑傘のように閉じて種子が完全に隠れる。形状は果序が長く間延びしたホップそのものである。ちなみに、日本に分布するカラハナソウ(写真3)は、ホップの変種であるが、香り、苦味に欠け、ビール製造の材料としては使えない。

クマシデの果穂は、大型であり薄緑色なので、濃い緑の樹冠の中にあっても目立つ。また、種子の成熟が早く、9月、まだ葉が緑のうちに総苞が褐変し、際立つ(写真4)。一方、アカシデ、イヌシデの果穂は葉の緑と同じで樹冠の中に、果穂が紛れこみ、成熟期には紅葉に紛れ込む保護色を呈する。
クマシデの一つの果序は60前後の果苞から形成されており、苞にはそれぞれ一個の種子が隠されている。果苞(総苞)は、雌花序が開花、受粉後に発達し、受精後の種子の発達段階で、これを覆うことから、種子を保護する役割を果たしているのかもしれない。また、種子が成熟後は、種子を抱えた果苞が果序からバラバラに外れ、苞が翼となって風に乗り種子を広域に散布させる。すなわち、風散布に適応した形態進化ということが出来る。

クマシデ類は、漢字で「四手」と書く。四手は、玉ぐしやしめ縄にたれ下げる短冊状のもので、その形がクマシデ属樹種の果穂(果序)に似ているため付けられたものと思われる。一方、地方名でソネあるいはソロと呼ばれる。しかし、その語源は明らかでない。クマシデ属樹木は英語でHornbeamと呼ばれる。その語源は、Horn(角)+ beam(木曜日)、つまり角のように堅い木という意味。ちなみに、クマシデは、シデ類の中では材が堅いことからカタシデとの別名もある。

写真1
写真1

写真2
写真2


写真3
写真3

写真4
写真4

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